絶滅の縁から復活、つぶらな瞳のチチュウカイモンクアザラシ

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チチュウカイモンクアザラシは世界で最も大きな絶滅の危機にさらされている海洋哺乳類の一つだ/Dendrinos/MOm
写真特集:絶滅の縁から復活、チチュウカイモンクアザラシ

チチュウカイモンクアザラシは世界で最も大きな絶滅の危機にさらされている海洋哺乳類の一つだ/Dendrinos/MOm

(CNN) 大きな丸い目を持つ優しい外見のチチュウカイモンクアザラシだが、見た目よりも狡猾(こうかつ)だ。漁網にかかった魚などをこっそり奪い、時には網を破ってしまうことで知られる。漁師の間での評判は芳しくなく、報復として意図的に殺される個体もいる。

チチュウカイモンクアザラシはかつて、地中海や黒海、アフリカ北西部、大西洋のカナリア諸島やマデイラ島、アゾレス諸島に広く分布していたが、肉や脂、毛皮を目的とした狩猟の対象になってきた歴史がある。こうした脅威の結果、20世紀に個体数が激減。地球上で最も大きな絶滅の危機にさらされる海洋哺乳類の一つとなった。

しかし近年、潮目が変わりつつある。依然として危機にあるものの、保全活動や法律による保護のおかげで、個体数は回復に向かっている。今世紀に入って個体数が400~600頭程度になったとの推計もあったが、現在では世界で最大1000頭に回復したと見られている。

2015年には、「近絶滅種」から「絶滅危惧種」に再分類され、2年前にはさらに「危急種」に格下げされた。科学者たちは今後も保護活動を続けることで、チチュウカイモンクアザラシにより明るい未来が訪れることを期待している。

地中海モンクアザラシは成長すると全長2.8メートル、体重は250~400キロに達する。オスは一般的に体色が濃く、メスはシルバーグレーか茶色。ヒレは比較的短く、丸みを帯びている。他の多くのアザラシとは異なり、上向きの鼻孔が特徴で、これが優しく、ほとんど犬のような表情を与えている/A. Bourikas/MOm
地中海モンクアザラシは成長すると全長2.8メートル、体重は250~400キロに達する。オスは一般的に体色が濃く、メスはシルバーグレーか茶色。ヒレは比較的短く、丸みを帯びている。他の多くのアザラシとは異なり、上向きの鼻孔が特徴で、これが優しく、ほとんど犬のような表情を与えている/A. Bourikas/MOm
ギリシャの哲学者アリストテレスは紀元前4世紀の著作「動物誌」で、チチュウカイモンクアザラシについて初めて言及した。このアザラシが開けた砂浜や海岸の岩場、入りやすい大きな洞窟に群れで集まっている点を指摘し、地中海沿岸の生活に欠かせないおなじみの存在として記述している。モンクアザラシという名前の由来は、首元の皮膚のひだがフード付きの修道服に似ていると初期の欧州の博物学者が考えたためとされる/Ariel Schalit/AP
ギリシャの哲学者アリストテレスは紀元前4世紀の著作「動物誌」で、チチュウカイモンクアザラシについて初めて言及した。このアザラシが開けた砂浜や海岸の岩場、入りやすい大きな洞窟に群れで集まっている点を指摘し、地中海沿岸の生活に欠かせないおなじみの存在として記述している。モンクアザラシという名前の由来は、首元の皮膚のひだがフード付きの修道服に似ていると初期の欧州の博物学者が考えたためとされる/Ariel Schalit/AP
現在では、チチュウカイモンクアザラシははるかに目立たない存在になっている。主に地中海東部で見つかり、最大の個体群はギリシャやトルコ、キプロスの海岸線や隠れた洞窟に生息する。アフリカ北西部モーリタニア沿岸のカボ・ブランコにも別の個体群が存在している。ギリシャ・モンクアザラシ調査保護協会(MOm)のディミトリ・ツィアカロス氏は、カボ・ブランコでは今でも全てのモンクアザラシが身を寄せ合う大きなコロニーが見られると述べ、「これが古代のモンクアザラシたちが取っていた行動だ」と説明する/A. Karamanlidis/MOm
現在では、チチュウカイモンクアザラシははるかに目立たない存在になっている。主に地中海東部で見つかり、最大の個体群はギリシャやトルコ、キプロスの海岸線や隠れた洞窟に生息する。アフリカ北西部モーリタニア沿岸のカボ・ブランコにも別の個体群が存在している。ギリシャ・モンクアザラシ調査保護協会(MOm)のディミトリ・ツィアカロス氏は、カボ・ブランコでは今でも全てのモンクアザラシが身を寄せ合う大きなコロニーが見られると述べ、「これが古代のモンクアザラシたちが取っていた行動だ」と説明する/A. Karamanlidis/MOm
ギリシャやモーリタニアのような地域では、チチュウカイモンクアザラシは何世紀にもわたる迫害が原因で浜辺を放棄し、目立たない場所にある海洋洞窟を繁殖や休息の場として使うようになった。ただ、かつての習性を少しずつ取り戻し始めている兆しもある。「開けた浜辺での出産や授乳が再び確認されている」とツィアカロス氏は説明。「人間の態度が改善されるにつれアザラシたちも自信を取り戻し、元の行動様式へと戻りつつある」と話す/Thanassis Stavrakis/AP
ギリシャやモーリタニアのような地域では、チチュウカイモンクアザラシは何世紀にもわたる迫害が原因で浜辺を放棄し、目立たない場所にある海洋洞窟を繁殖や休息の場として使うようになった。ただ、かつての習性を少しずつ取り戻し始めている兆しもある。「開けた浜辺での出産や授乳が再び確認されている」とツィアカロス氏は説明。「人間の態度が改善されるにつれアザラシたちも自信を取り戻し、元の行動様式へと戻りつつある」と話す/Thanassis Stavrakis/AP
チチュウカイモンクアザラシを守る取り組みには、出産用の洞窟など主要生息地周辺での海洋保護区の設置、漁具の制限と一部の危険な漁業手法の移転、一般市民や漁業関係者への啓発などが含まれる。また、国内外の様々な法律や協定に基づく強力な法的保護も与えられている/Christian Charisius/Picture Alliance/DPA/AP
チチュウカイモンクアザラシを守る取り組みには、出産用の洞窟など主要生息地周辺での海洋保護区の設置、漁具の制限と一部の危険な漁業手法の移転、一般市民や漁業関係者への啓発などが含まれる。また、国内外の様々な法律や協定に基づく強力な法的保護も与えられている/Christian Charisius/Picture Alliance/DPA/AP
MOmはチチュウカイモンクアザラシの保護に取り組むNGOのひとつ。生息地の地図化や個体数のモニタリングを行い、親を失ったり負傷したりした個体のために専用リハビリ施設を運営している。一般市民の意識改革に取り組んでおり、「以前の漁師は我々を敵視していたが、今では私たちのネットワークの一員となりつつある」(ツィアカロス氏)という/Dendrinos/MOm
MOmはチチュウカイモンクアザラシの保護に取り組むNGOのひとつ。生息地の地図化や個体数のモニタリングを行い、親を失ったり負傷したりした個体のために専用リハビリ施設を運営している。一般市民の意識改革に取り組んでおり、「以前の漁師は我々を敵視していたが、今では私たちのネットワークの一員となりつつある」(ツィアカロス氏)という/Dendrinos/MOm
近年の保護活動により希望が芽生えているものの、チチュウカイモンクアザラシの未来は依然として不透明だ。孤立され分断された個体群は生息地の劣化、汚染、疾病、深刻化する気候変動の影響といった脅威に継続的にさらされている。「監視と対策を続ける必要がある」とツィアカロス氏は訴え、「チチュウカイモンクアザラシの未来については慎重ながら楽観視している。それが我々の心の持ち方だ。願わくば、この種を本来の場所に戻すことができれば」と語った/Dendrinos/MOm
近年の保護活動により希望が芽生えているものの、チチュウカイモンクアザラシの未来は依然として不透明だ。孤立され分断された個体群は生息地の劣化、汚染、疾病、深刻化する気候変動の影響といった脅威に継続的にさらされている。「監視と対策を続ける必要がある」とツィアカロス氏は訴え、「チチュウカイモンクアザラシの未来については慎重ながら楽観視している。それが我々の心の持ち方だ。願わくば、この種を本来の場所に戻すことができれば」と語った/Dendrinos/MOm
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