食料運搬のトラック77台が略奪被害、飢餓深刻化 ガザ
(CNN) 国連世界食糧計画(WFP)は5月31日、パレスチナ自治区ガザ地区の南部と中部を走行していた援助物資を運搬するトラック77台が、飢えに苦しむ住民らによって略奪されたと明らかにした。ガザでは飢餓が深刻化している。
WFPが同日、SNS「X(旧ツイッター)」に投稿した声明によると、小麦粉を積んでガザに入ったトラック77台はすべて途中で止められ、荷台の食料は主に家族を養おうとする住民に持ち去られたという。WFPは、ガザの完全封鎖から80日を経て、地域社会は餓死寸前にあり、もはや食料を見過ごすことはできなくなっていると強調した。
地元団体の代表がCNNに語ったところでは、中部ネツァリム付近で小麦粉を載せたトラック20台、南部ハンユニスで約50台がそれぞれ襲われ、積み荷が奪われたという。
WFPは同日、Xへの投稿で「ガザの人道状況は悪化の一途をたどっている。境界の閉鎖、飢餓、絶望により支援物資の輸送は不安定化し、トラックは略奪され、人びとは小麦粉1袋のために命を懸けている」と訴えた。その上で「希望を取り戻し、恐怖を和らげ、更なる混乱を避けるためには、今すぐに大量の食料を投入しなければならない」と呼びかけた。

支援物資を運ぶトラック/Amir Cohen/Reuters
動画には、ハンユニスで小麦粉の袋を抱えて走る人びとが捉えられていた。ネツァリムでも同様の光景が確認された。ネツァリムでは人びとが袋を奪おうと殺到する中、銃声が響いた。
ガザでは飢えが広がり、国連機関は大規模な飢餓を回避するには支援物資の搬入と配分を大幅に拡大する必要があると警告している。略奪はこれまでも複数回起きている。
アラブ首長国連邦(UAE)は先に、手配したトラック24台分の援助物資のうち目的地に到着したのは1台だけだったと明らかにしていた。
空腹のパレスチナ人が支援団体「ガザ人道基金(GHF)」の新たな食料配布拠点2カ所に殺到し、混乱が生じたる事態も起きていた。パレスチナ保健省によると、この際に11人が死亡、数十人が負傷した。

難民キャンプで暖かい食べ物を受け取るパレスチナの人々=5月24日/Eyad Baba/AFP via Getty Images
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、イスラエルによる封鎖が一部緩和された過去2週間で約900台のトラックがガザに入ったと明らかにした。その量は「現在のガザの1日当たり必要量のわずか1割強」に過ぎず、今年初めの停戦期間中に入っていた1日600〜800台に比べると微々たるものだとして「目の前で進行する大量餓死は政治的意思があれば止められる」と訴えた。