北朝鮮が進水失敗の駆逐艦に謎の物体設置、風船か 衛星写真
ソウル(CNN) 先週の進水失敗後に横倒しとなり、部分的に水没している損傷した駆逐艦に沿って、北朝鮮が風船とみられる物体を設置していることが分かった。新たな衛星画像から明らかになった。
目的は不明だが、複数の専門家はCNNに対し、艦体を立て直すためか、ドローン(無人機)の偵察から隠すために使用されている可能性があるとの見方を示した。
損傷した駆逐艦は北朝鮮の最新の軍艦で、意欲的な海軍近代化の取り組みの勝利を告げるものになるはずだった。だが今月21日、進水メカニズムの不具合で艦尾が早々に水中へ滑り落ち、艦体の一部が損傷して、艦首部分が船台に取り残される結果となったという。国営朝鮮中央通信(KCNA)は珍しく不手際を認める報道を行った。
北東部の清津で進水失敗を目撃した金正恩(キムジョンウン)総書記は「犯罪行為」と断じ、6月下旬に開催される朝鮮労働党中央委員会総会までに修復するよう命令。国家の名誉がかかっているとの認識を示した。
これを受けて当局者は修復を急ぐ一方、責任者とされる人物を処罰し、ここ数日間で造船所の主任技師を含む4人を拘束している。
アナリストらは謎の物体について、駆逐艦の早期修復をめざす取り組みの一環で風船が使われているようだと指摘する。
韓国の国会議員で軍事アナリストのユ・ヨンウォン氏は、「風船とみられる物体は艦体を再び浮かべるためではなく、さらなる浸水を防ぐために設置されているように見える」と指摘した。
米海軍退役大佐のカール・シュスター氏は、もし本当に風船であれば、「低~中レベルのドローン偵察」を妨害するためか、船台に残された部分への圧力を軽減する目的の可能性があるとの見方を示した。
国際戦略研究所(IISS)のニック・チャイルズ上級研究員(海軍・海上安全保障担当)は、艦体の浮揚や引き揚げを目的に風船を使っているのであれば、艦をさらに損傷させる可能性があると説明する。
チャイルズ氏は「いずれにしても艦体には大きな圧力がかかっている可能性が高い」と述べ、上から持ち上げれば圧力がさらに増幅する可能性があるとの見方を示した。通常は可能な限り大きな浮力を確保したうえで、下から持ち上げる手法が取られるという。
マクサー・テクノロジーズが提供した衛星画像によると、駆逐艦の周囲には23日以降、風船状の白い物体が10個以上設置されている。