世界の氷床、急激に融解進む 100年で1メートル海面上昇の恐れ
(CNN) 新たな研究によると、世界の氷床が急激に融解し始めている。世界が奇跡的に気温上昇を1.5度以内に抑えこんだとしても、100年で海面は約1メートル上昇し、沿岸部からの「大規模な」移住を余儀なくされる恐れがある。
国際的な科学者グループは、デンマーク自治領グリーンランドと南極の氷床が「安全に」存続するための温暖化の限界値を設定しようと試みた。科学者らは衛星データ、気候モデルのほか、過去の証拠(氷床コア、深海たい積物、タコのDNAなど)を用いた研究を綿密に検討したという。
世界は温暖化を産業革命以前の水準から1.5度に抑えることを掲げているが、現時点で2100年までに最大2.9度の気温上昇が予測されている。しかし、20日にコミュニケーションズ・アース・アンド・エンバイロメント誌に掲載された今回の研究で最も憂慮すべき発見は、1.5度ですら氷床を救うのには十分でない可能性があるという点だ。
研究者らによると、たとえ世界が現在の1.2度の上昇を維持したとしても、急速な氷床の減衰と壊滅的な海面上昇を引き起こしかねない。
グリーンランドと南極の氷床は、世界の海面を約65メートル上昇させるだけの淡水を保持している。1990年代以降、これらの氷床の消失量は4倍に増加し、現在では年間約3700億トンが失われている。氷床の融解は海面上昇の主要因であり、年間海面上昇率は過去30年で倍増している。
複数の研究が、1.5度の気温上昇は、不可逆的な氷床の急速な融解を防ぐには「はるかに高すぎる」と示唆しており、今回の研究も世界は今後数世紀にわたって数メートルの海面上昇に備える必要があると警鐘を鳴らす。
世界では約2億3000万人が海抜1メートル未満の沿岸部に居住している。氷床に含まれる氷の量がわずかに変化しただけでも世界の海岸線は「大きく変化」し、数億人が移住を余儀なくされる。
研究では、今世紀末までに海面が年間約1センチ、100年でおよそ1メートル上昇する可能性があることが判明した。

西南極の浮氷=2016年10月28日/Mario Tama/Getty Images
研究者らは、気候変動に対する氷床の脆弱(ぜいじゃく)性の理解を深めるにつれ、氷床を救うための「安全な」温度と推定されるしきい値が下がり続けていることに強い懸念を示す。
例えば、初期のモデルでは、グリーンランドの氷床が不安定になるのは気温が約3度上昇した場合と示唆されていたが、最近の推定では約1.5度に引き下げられている。
研究者らは、氷床の急速な崩壊を回避するには、気温上昇を産業革命以前の水準から1度程度まで抑える必要があると結論付けている。