ロシアの空爆、10歳の息子失った母親が語る恐怖 「一緒にいればよかった」
ロシアの空爆で命落とした10歳少年、母親が悲しみ語る
クラマトルスク(CNN) 戦争による殺戮(さつりく)が何年も続くと、死者たちの名は顔のない名簿に延々と書き連ねられるだけとなる。
しかし各々が姿を消したことで、残された世界にはぽっかりと穴が開く。ティムール・フリホレンコ君以上にそれが当てはまるケースもなかなかない。
ウクライナの前線の街、クラマトルスク。7月22日の現地時間午前4時40分に、ロシアの空爆がアパートの最上階を直撃。10歳のティムール君だけが命を落とした。ロシアとの戦争により直近で死亡した子どもの一人となった。
戦争で父を失い、祖母に会うためクラマトルスクを訪れていた。空爆の9時間後には母親のナスチャさんと一緒に比較的安全な首都キーウへ列車で向かう予定だった。
ドネツク州の緊急サービスが投稿した動画には、ティムール君のぐったりした、血だらけの体が映っている。まだ脈があるらしく、廃虚と化したアパートの外で蘇生措置を施されている。母親はその晩、ティムール君を祖母の元に残していたが、大急ぎで戻ってきていた。
蘇生措置が行われている40分間、命が助かるよう神に祈ったが、奇跡は起こらなかったとナスチャさんは振り返る。
1時間前に姉妹からの電話で空爆のことを知った。その時ティムール君の祖母は救出されていたが、ティムール君本人はまだ瓦礫(がれき)の中で所在が分からない状況だったという。連絡を受けて、「夢の中にいるような気がした」(ナスチャさん)
ナスチャさんにとって、ティムール君は一人息子だった。父親は2023年5月、リマン郊外でロシア軍との戦闘により死亡した。ナスチャさんは1年近く前に再婚したが、2番目の夫はその半年後に心臓発作で亡くなった。