ロシアの夏季攻勢で高まるウクライナの危機
ロシアの夏季攻勢と対峙、ウクライナ軍の作戦に密着
ウクライナ東部ポクロフスク近郊(CNN) ウクライナ東部全域で、ロシアはわずかな前進を積み重ねている。多大な資源が投入された今回の夏季攻勢は、前線の勢力図を一変させるリスクをはらむ。
CNNは、ドネツク州で最も戦闘が激化するウクライナの町、コンスタンチノフカとポクロフスクの背後の村々を4日間取材し、領土支配の急速な変化を目の当たりにした。ロシアの無人機は、かつてウクライナ軍が静穏のオアシスとして頼りにしていた地域に深く侵入。迎え撃つ部隊は敵の執拗(しつよう)な進撃を阻止するための人員と資源の確保に苦しんだ。
ロシアの勢いは、トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領に対し、50日としていた和平合意の同意への期限を10~12日に短縮したことと重なった。トランプ氏はプーチン氏に「非常に失望している」と述べ、米国と欧州の同盟国が数カ月にわたって求めてきた停戦を受け入れない決定をプーチン氏が既に下したとの見方を示唆した。
期限の短縮はウクライナ政府から歓迎された。また西側諸国の政府にとっては、ウクライナへの外交的・軍事的支援を巡る緊迫感が高まる可能性もある。しかし、ロシア政府が方針を転換する公算は小さいようだ。同国における兵力の優越、犠牲者への寛容さ、そして広大な軍事生産ラインはここへ来て成果を上げ始めている。ウクライナのゼレンスキー大統領は先週、ロシア軍は「前進していない」と述べたものの、前線の状況は「厳しい」と認めた。
危機の深刻化を最も強く感じたのは、ポクロフスク市周辺だった。ロシア軍は数カ月にわたり多大な犠牲を払いながら同市を攻撃したが、成功は収めていなかった。それでもウクライナ軍のある司令官は、「非常に悪いシナリオ」について説明。ポクロフスクに隣接するミルノフラド市の部隊が「包囲される」危険にさらされていると述べた。その上で、ロシア軍が既に近隣のロディンスケ村に進攻し、ビレツケ市の境界にも展開しているため、ポクロフスク市内のウクライナ軍への補給線が窮地に陥っていると付け加えた。この見解は29日、CNNの取材に対しウクライナの警察官と同軍兵士が確認した。
多くの当局者と同様、機微な問題のため匿名を条件に取材に応じたこの司令官は、昨年のアヴディーイウカとヴフレダールのような包囲攻撃の可能性を懸念していると述べた。「我々は最後まで持ちこたえ、その結果、都市と住民の両方を失った」。
同地域で活動する部隊の報道官、ヴィクトル・トレグボフ氏は29日、国営テレビに対し、「東部戦線全域で絶え間ない圧力がかかっている。まさに至る所で」と述べた。ロシア軍は主に歩兵で攻撃を仕掛けていると彼は述べた。「誰かが殺されても、すぐに別の人間が続いて出てくる」。