アジア初の大麻合法化から３年、再度規制強化へ　タイ

（ＣＮＮ） タイがアジアで初めて大麻を合法化してから３年がたち、同国政府はこのほど、国内の「グリーンラッシュ（大麻バブル）」を抑制するための新たな規則を施行した。

２６日から大麻を購入するには医師の処方箋（せん）が必要となり、事実上、大麻の使用は医療・健康目的のみに制限される。

タイのソムサック保健相は２５日、ＣＮＮに対し、最終的には大麻を麻薬として再び違法化する意向を示した。全国、特に観光地で大麻の販売店やマリフアナカフェが急増していた同国で、今回の動きは大きな方針転換となる。

医師の診断書と広告禁止

タイ保健省による新たな規則は、大麻を規制対象ハーブに指定することを目的としている。

つまり、認可を受けた大麻販売店は、医師の処方箋を持つ顧客にしか販売できず、詳細な販売記録の保管と当局による定期検査が義務付けられる。また、栽培業者への規制も強化され、商業広告の出稿のほか、自販機やオンラインでの大麻販売も禁止された。

バンコク郊外の大麻栽培施設＝２０２４年/Sirachai Arunrugstichai/Bloomberg/Getty Images

全国で１万８０００店あまりの認可販売店は、規則に従わなければ閉店の危機に直面することになる。違反した販売者には、最長１年の禁錮または２万バーツ（約９万円）の罰金が科せられるが、保健省は大幅に厳罰化する新たな法案を提案している。

広告禁止は、首都バンコクのカオサン通りや、パタヤといったビーチタウンなどの観光地の景観を劇的に変える可能性がある。こうした観光地では、数百もの大麻の販売店やカフェがひしめき、緑のネオンや大麻の形をした風船、魅惑的な文句で観光客の気分を高揚させている。

ソムサック氏は「観光客にはタイの文化や自然を楽しんでほしい。タイは嗜好（しこう）用大麻の使用地として見られるべきではない」と述べた。

なぜ新しい規則が導入されたのか

タイでは２０１８年から医療用大麻が合法化され、２２年に大麻や大麻関連製品の栽培・取引、あるいは大麻の一部を病気の治療に使用することが合法化された。これは、違法薬物に対する厳しい罰則で知られるタイにおいて、大きな動きだった。

合法化後に政府は大麻産業を規制する意向だったが、実現に至らず、法的空白が生じた。そのため、嗜好用大麻の使用がタイ全土、特に外国人に人気の地域で急増した。

数千もの大麻販売店が出現し、マリフアナカフェや大麻を扱うスパ、美容トリートメントなどのビジネスも増えている。チェンマイやバンコクといった都市では、マリフアナフェスも開催され、合法化は観光客を大いに引き付けている。

タイ商務省が２２年に発表した報告書では、大麻関連産業は２５年までに１２億ドル規模に成長すると推定されているが、ソムサック氏は「規制されていない取引のため」、現時点では産業の価値を「明確に推定できない」と指摘する。

ソムサック氏は、新たな規制はこうした法的空白を埋め、乱用を防ぐのに役立つと語った。

社会への影響と密輸

規制強化を支持する人々は、大麻産業が制御不能なほどに拡大していると述べ、健康への懸念、子どもの大麻使用、依存症を問題視する。タイの島々では、観光客による路上での使用に対する苦情も増加していると報じられている。

リゾート地であるプーケットでは、大麻の売買を制限する区域を設ける計画が提案されている。

「公共の安全が最優先されなければならない。現在の大麻産業は、乱立する無規制の店舗で成り立っている」（ソムサック氏）

この問題に追い打ちをかけるように、合法化以降、大麻の密輸も急増している。