迫力に欠けるロシア軍の「夏季攻勢」 ただしウクライナに喜びはなし

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建物にドローンが直撃 ウクライナ首都

(CNN) ウクライナ政府ではこの数カ月、かねて予期されてきたウクライナ東部のさらなる掌握を目指すロシア軍の攻勢が話題となっていた。これまでのところ、ロシア軍の攻勢は迫力を欠いているものの、一部で領土を獲得しているほか、兵力を大幅に増強した地域もある。

停戦交渉が後回しとなるなか、ロシアのプーチン大統領は領土拡大の追求を続けている。プーチン氏は先週、いわれのない侵攻を正当化する主要な方途の一つを改めて表明した。

「私はロシア国民とウクライナ国民は一つの民族だと考えている。この意味で、ウクライナ全体は我々のものだ」(プーチン氏)

それでも、ウクライナは一部地域で反撃を開始したほか、国内の防衛産業を急速に発展させている。ロシアの戦時経済はより強い逆風に直面している。

ロシア軍は1200キロに広がる前線の複数の地域で前進を試みている。ウクライナ軍のシルスキー総司令官によれば、東部ドネツク州の要衝ポクロウスク近郊の最前線の一部だけで11万1000人のロシア軍が集結している。同地では毎日少なくとも50回の衝突が起きているという。ウクライナ軍参謀本部によれば、昨年12月に同地に駐留していたロシア軍は約7万人だった。

シルスキー氏は、ロシア軍による北部スーミ州への侵攻が阻止されたと主張した。米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は、ウクライナ軍がスーミ州の一部を奪還し、ロシア軍の前進のペースが鈍化したと明らかにした。

シルスキー氏は「敵がロシア領から開始した『夏季攻勢』の試みの波は消えつつあるといえる」と述べた。

ロシア軍のミサイルによって破損した建物の前を歩く住民=13日、ウクライナ・スーミ州/Sofiia Gatilova/Reuters
ロシア軍のミサイルによって破損した建物の前を歩く住民=13日、ウクライナ・スーミ州/Sofiia Gatilova/Reuters

しかし、状況は複雑だ。ここ数日、ロシア歩兵部隊がドネツク州とドニプロペトロウスク州との州境で勢力を拡大している。

ウクライナの分析グループ「ディープステート」によれば、ウクライナ軍の防衛は急速に崩壊し続けており、ロシア軍はそうした地域で、継続的な攻撃によって大きく前進している。

クレムリン(ロシア大統領府)はかねて、ウクライナ東部に位置するドネツク州とザポリージャ州、ヘルソン州の全域を掌握するまで軍事作戦を継続すると主張してきた。ルハンスク州については、すでに大部分がロシア軍の占領下にある。

現在の進捗(しんちょく)率では停戦には何年もかかりそうだ。トランプ米政権が停戦交渉の促進にそれほど熱心ではないように見えることから、戦闘は今年の年末から来年まで継続する可能性が高そうだ。

3方面の戦場は今や、ドローン(無人機)主導の巧妙な特殊作戦と非常に基本的な歩兵による攻撃というあり得ない組み合わせとなっている。

その一方で、6月上旬に行われたウクライナによるロシアの戦略爆撃機への大胆な攻撃では、ロシア領奥地に配備されたトラックから発射されたドローンが使われ、約10機の航空機が破壊された。

ウクライナ保安局(SBU)は28日、新たなドローン攻撃によって、クリミア半島にあるロシア空軍の基地に大きな被害が出たと主張した。

対照的にロシア軍の兵士は徒歩やバイクで、ときには12人以下の集団となってウクライナ東部の見捨てられた集落に進攻している。ドローンを遮蔽(しゃへい)物として利用しているものの、装甲車両は見当たらない。このようなやり方はウクライナ軍に戦術の変更を迫り、より小規模な陣地への移行を促している。ウクライナのウメロウ国防相は先に、地形にあわせて防御を偽装して、探知を避けるために規模を縮小していると明らかにしていた。

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