搭乗2~3時間前の空港到着は本当に必要? SNSチャレンジ「エアポート・セオリー」で検証
(CNN) TikTok(ティックトック)でトレンドになっている「エアポート・セオリー」をご存じだろうか。搭乗時刻の15分前に空港に到着するという、航空会社は絶対にお勧めしないSNSチャレンジだ。
このアイデアは、オンラインでチェックインを済ませ、手荷物だけで旅行する場合、保安検査をサクっと通過し搭乗ゲートへ直行すれば時間通りに機内に乗り込めるというもの。
危険すぎるように思えるが、エアポート・セオリーを実際に体験したコンテンツクリエーターの話や空港関係者の意見を聞いた。
アトランタ国際空港を18分で駆け抜ける
エアポート・セオリーとは「飛行機に乗るために、推奨されている2~3時間前に空港に到着する必要は本当にあるのか」に関するものだと、神経外科医のベッツィ・グランチさんは言う。グランチさんはTikTokで240万人のフォロワーを抱える。
グランチさんは、渋滞と荷物のトラブルで、搭乗時間の約26分前に地元の空港にたどり着いたことがあり、そのときにこの理論を試してみた。
場所は世界で最も混雑する空港、ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港だった。
コンテンツクリエーターであるグランチさんは、本能的にスマートフォンを取り出し、録画を開始。
車をとめ、エスカレーターを上って保安検査場へと走る。幸い、搭乗ゲートが保安検査場から一番近かったため、グランチさんは約18分でたどり着けた。
「一番大きかったのは、行列がなかったことだ」としながらも、グランチさんは荷物を保安検査で止められ、検査のために取り出さなければならなかった。このときばかりは自分の決断を考え直さざるを得なかったという。
安全策を講じたテスト
コンテンツクリエーターのジェームズ・ショーさんは、妻のテリーさんと娘のナオミさんと一緒に地元フロリダ州のタンパ国際空港でエアポート・セオリーを試した。
ショーさん一家は、完全に神経をすり減らすようなアプローチではなく、リスクを回避する方法を取った。
一家は90分前に到着。ストップウォッチを使って空港での移動時間を計測する様子を動画に収めた。ゲートには13分もかからずたどり着いた。
「荷物は預けなかったので、持ち込み手荷物は手元にあった」とショーさん。「春休みの週で、タンパ空港が特に混雑している日だったので、試すにはちょうどいいタイミングだった」
ショーさんはさらに「まったく走ることもなく、ずっと歩いていた。すごく簡単だったよ」と付け加えた。
一家はTSA事前審査プログラム(対象となる米国渡航者向けの保安検査迅速化プロセス)を利用しており、それがなければ「間違いなく保安検査でもっと長く待たなければならなかった。あの日は本当に長い列ができていたから」とショーさんは話す。
ショーさんによれば、ドアが閉まる間際に空港内の電車に乗れたのも幸運だったという。
ゴールデンアワー
よく知っている空港でTSA事前審査プログラムを利用して、預け荷物もなく国内線に搭乗する場合であれば、「出発の約1時間前」に空港に着くのが一般的だとショーさんとグランチさんは口をそろえる。
ショーさんは「旅行は多くの人にとってストレスになると思う」「だからこそ『3、4時間前とか早めに到着しないといけない』と思ってしまう。でも、そうする必要はないと思う」と語る。
一方で、特に普段あまり旅行しない人は、自分が心地よいことをすべきだともショーさんは考える。「もし不安なら、少し早めに着けばストレスを感じなくてすむ。着いてからコーヒーを飲んだり、22ドルでキャンディーを買ったりすれば、リラックスして旅行を楽しめるよ」
性格テスト
ギリギリで行動するときに感じる快適さは、経験だけでなく性格にも左右される。
グランチさんは、思いがけずエアポート・セオリーを試すことになったことを「正直に言って楽しかった」と振り返る。
「アドレナリンで元気になる」脳神経外科医であるグランチさんは「とても競争心が強く」、勝つことが好きだと言う。そんなグランチさんにとってエアポート・セオリーは「刺激的な」チャレンジだ。
ただしグランチさんとショーさんは、海外旅行でこのトレンドを試すことは絶対にないと口をそろえる。保安検査は厳しくなるし、しくじったときの経済的リスクも大きくなるからだ。
ネット上で広まるエアポート・セオリーに関する動画の多くは、ゲートに15分や20分で到着できることを証明しているが、そうすべきだと証明しているわけではない。
2023年時点で世界6位の利用者数を誇るデンバー国際空港の広報担当者はCNN Travelに対し、2~3時間前の到着を案内していることについて「天候や電車の不具合など、予期せぬ事態が発生した場合の備え」だと説明する。
頻繁に飛行機を利用し、待つのが嫌いなグランチさんは、何度も使ったことのある路線でなら今回のチャレンジを繰り返すことに抵抗はないという。「私自身は、ひとり旅なら絶対にまたやる」
ショーさんは逆に「エアポート・セオリーは好きじゃない。ばかげていると思う。飛行機に乗り遅れるリスクを冒すなんてとにかくばかげている」と語った。