世界一のユーチューバーが立ち入り制限の遺跡に、メキシコ政府の許可めぐり物議
(CNN) 米国の人気ユーチューバー、ミスタービースト(ジミー・ドナルドソン)の動画をめぐり、メキシコ政府に直接かかわる論議が巻き起こっている。
ミスタービーストは登録者数で圧倒的な世界一を誇るユーチューバー(登録者は2位のユーザーよりほぼ1億人多い)。新・世界七不思議の一つに選ばれているユカタン州のチチェン・イッツア遺跡など、考古学的重要性が大きいメキシコの遺跡を訪れた動画を5月10日に公開した。
メキシコではほかにもカンペチェ州のカラクムル遺跡やユカタン州のバランカンチェ遺跡を訪れている。
動画の再生数は14日午後までに5500万回を突破。ミスタービーストの一行は、チチェン・イッツア遺跡のエル・カスティージョ(別名ククルカン神殿)ピラミッド周辺に加えて、別のセノーテや神殿といった遺跡の内部にも足を踏み入れていた。
メキシコ政府によると、中には常時公開されていない遺跡もあった。
大きな論議の的になったのは、スペイン人によるメキシコ征服以前の文化の聖地とされ、立ち入りが制限されている遺跡に、ミスタービーストの立ち入りが許可されたという事実だった。
動画の中でミスタービーストは言う。「政府が自分たちにこんなことをさせてくれるなんて信じられない。本当にどうかしてる。考古学者だってここには入れない」
騒ぎが大きくなったことを受けてメキシコ文化省の国立人類学歴史学研究所(INAH)は12日、遺跡見学も撮影も「正式申請」を受けて行われたと発表した。
ただし申請したのはミスタービーストではなく「連邦観光省およびユカタン州とカンペチェ州政府」だったとINAHは説明。「メキシコ観光省との共同で」撮影が行われたとしている。
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は14日、「放送」の許可はあったとしながらも、INAHに対して「どのような状況で許可が出されたのか」報告するよう求めた。
その上で、「もしも許可が違反だった場合、どのような処罰を適用するか(判断しなければならない)」とした。
論議を巻き起こした場面はほかにもある。チチェン・イッツア遺跡のエル・カスティージョの頂点で神殿の内部をドローン(無人機)から撮影したと思われる映像もあった。これについてINAHは、撮影は神殿の内部ではなく、外から行われたと述べている。
さらに、ミスタービーストがヘリコプターから遺跡の上に降り立ったように見える場面や、スペイン人による征服以前に作られた仮面を両手で抱える場面もあった。
こうした場面は全てでっち上げか、撮影後に編集されたものだったとINAHは強調している。
メキシコの遺跡の探検や撮影は規制が厳しく、許可が出ることはあまりない。
INAHによると、ミスタービーストの撮影は職員が常時監督していたものの、普段は一般の立ち入りが認められない場所にも立ち入りが許された。カラクムル遺跡については、常時公開されていない部分も見学したことを認め、「正当な理由があって事前に手配すれば立ち入ることができる」と説明している。
しかしメキシコの法律では、遺跡の調査はごく少数の研究機関にしか認めていない。