イスラエル軍司令官、ガザ占領に警告 首相が「完全制圧」検討する中
(CNN) イスラエルのネタニヤフ首相がパレスチナ自治区ガザ地区の「征服」命令を検討している中、同国の軍司令官がガザ地区の完全制圧に反対する姿勢を示した。協議に詳しいイスラエルの関係筋3人が明らかにした。
関係筋によると、イスラエル国防軍(IDF)のエヤル・ザミール参謀総長は5日夜、高官らとの会合で、ガザ地区の完全制圧は軍を地区内に閉じ込め、残りの人質を危険にさらすことになるだろうと警告した。
ザミール氏によれば、このような動きは軍の負担を増大させる。既に予備役兵の間では消耗と燃え尽き症候群が蔓延(まんえん)しているという。
2人の情報筋によると、ザミール氏の計画ではガザ市や人質が拘束されている可能性のある他の地区の包囲を求めていたが、ネタニヤフ氏はこれらの地域の中心部に向けたより踏み込んだ作戦を強く要求していた。
CNNが報じたように、ネタニヤフ氏は7日に安全保障閣僚会議を開き、「ガザ地区の完全制圧」を支持するよう求める予定だ。この動きはイスラエルの軍事作戦の大幅な激化につながる。現在イスラエル政府は停戦を求める国際的な圧力にさらされている。
今回の意見の相違は、イスラエル軍指導部と政治階層間の不和の深刻化を浮き彫りにしている。イスラエル軍が戦争終結に向けて外交努力を推奨するのに対して、ネタニヤフ氏率いる政府は最大限の戦争目標を掲げている。
イスラエル軍は、既にガザ地区の約75%を制圧していると主張。約2年間の戦争で同地区の大部分は荒廃し、人道危機を引き起こしている。イスラエルは20年前にガザから撤退したが、ザミール氏は完全な軍事占領でIDFは再び罠(わな)にかかる可能性があると警告した。
一方、政権内の極右政党は、イスラム組織ハマス壊滅のため、イスラエルによるガザへの爆撃と封鎖の拡大を繰り返し求めている。イスラエルは2年近くにわたる戦闘にもかかわらず、ハマス壊滅を実現できていない。
ベングビール国家安全保障相はソーシャルメディア上で、ザミール氏に対し、「たとえ占領と断固たる行動に関する決定がなされたとしても」国の政治指導部に従うことを「自らの声で」公に表明するよう要求した。
5日の協議の後、首相官邸は「IDFは安全保障閣僚会議のいかなる決定も実行する用意がある」という公式声明を発表した。
6日、ネタニヤフ氏はイスラエル野党党首のヤイル・ラピド氏とも会談。ラピド氏は会談後にビデオ声明を発表し、ガザ占領は「非常に悪い考えだ」と述べた。
「国民の大多数が支持しない限り、このような行動に出るべきではない」「イスラエル国民はこの戦争に興味がない。我々は代償を払うことになるだろう」(ラピド氏)
世論調査で繰り返し示された結果によれば、イスラエル国民の大多数はガザに残る人質50人の解放と引き換えに戦争を終結させることを支持している。