民間人を狙うロシアの無人機、プーチン氏は南部ヘルソンの再占領を目指す
ヘルソン(CNN) ロシア軍がウクライナ南部ヘルソン州の掌握に向けて新たな行動を開始した。ドローン(無人機)で幹線道路を脅かし、重要な橋を攻撃して街を二分しようとしている。
3日にはロシア軍の空爆によってヘルソン市とコラベル島を結ぶ主要な橋が損傷し、島に残る推定1800人のウクライナの民間人を避難させる大規模な取り組みが始まった。地元住民と救助隊によれば、ロシア軍は過去3日間、避難活動自体を標的にしていないとみられる。ここ数カ月にわたり市内で日常化している凄惨(せいさん)なドローン攻撃から久々に解放され一時的な静けさが訪れた。しかし、6日午後にネット上に投稿された動画では橋の付近と島でロシア軍の大規模な攻撃が再開された様子が示されている。島にはウクライナ軍も駐留しているとみられる。
ロシアの軍事ブロガーは、北側から市内へ通じる主要幹線道路が今後、長距離ドローンの標的になると警告した。こうした警告がどれほどの影響力があったのかは不明。CNNの取材班が6日にその道路を移動した際には、貨物車や民間車両、さらには多くの自転車の集団などを目撃した。所々でドローンを遮るため舗装路面上にネットが張られていた。
ヘルソン市は開戦初期にロシアによって占領されたが、2022年11月にウクライナ軍が反転攻勢で奪還した。ヘルソン市を含むヘルソン州の占領は、ロシアのプーチン大統領の主要な目標のひとつとされる。コラベル島を市中心部から切り離そうとする新たな圧力は、ロシア軍が数週間以内に島に砲撃を加えた後に上陸を試みるのではないかとの懸念を強めている。
コラベル島からの避難は6日も続いた。救助隊は、日中に島から退避させた925人の一部を収容した際、島は「穏やかだった」とCNNに語った。地元住民によれば、半島では砲撃が続いているが、ドローンは避難する車列を攻撃しなかったようだ。疲弊した住民は援助拠点に着くと、安堵(あんど)と将来への不安の入り交じった涙を流した。
装甲車の後部座席にいたナディヤさんは「朝から激しく攻撃されている。いったい、いつになったらこんなことが終わるのか。もう頭がおかしくなりそうだ。彼らはいつ正気に戻るのか。『平和』の名の下にこんな恐怖をもたらし、みんなを殺しているのに」と語った。米国のトランプ大統領がロシアとの和平交渉に設けた期限について耳にしたが、自身の状況は何も変わっていないとも語った。
高齢の避難者の大半は市内の別の場所に宿泊場所の提供を約束されたが、他に選択肢は少ない。35度の暑さの中、松葉杖を握りしめたニナさん(85)は、救助隊が荷物を運んでいたが、疲れ切っていた。「計画なんてない。置いてくれる場所で暮らすしかない」と話した。「片脚の私には、もうこの砲撃に耐える神経が残っていない」
地元ウクライナ当局は、避難車列へのドローン攻撃が一時やんだとしても、民間人を標的とした数カ月にわたる攻撃の後では取るに足らないと強調した。
ロシア軍は標的が何であろうと一切気にないとヘルソン市軍事行政トップ、ヤロスラフ・シャンコ氏。「ロシアに人道を語る意味は皆無だ。地域社会と市への攻撃は絶え間なく続いている」
ロシアのドローンは民間人を定期的に狩り立てており、その操縦者は残忍な攻撃の様子をネット上で誇示している。ヘルソンの主要な病院には砲撃やドローンによる負傷者が25人搬送された。6日には午前に3人、午後にさらに2人が新たに搬送されたと医療関係者が明らかにした。
オレフさん(62)は6日午前4時ごろ、近所の家がドローン攻撃で炎上したため助けようと外に出たところ被弾した。フェンスを越えようとして後ろ向きに倒れ、両脚がフェンスの上に出ていたため、上半身は守られたが、脚を負傷した。
オレフさんのように単身で歩行が困難なため退院できない患者が多く、病棟のベッドは埋まりつつある。地元当局によると、CNNの取材中、病院上空にはドローンが3機ホバリングしていた。銃撃音とドローンのエンジン音が病院の網戸越しに病室まで響いてきた。