(CNN) 米国のドナルド・トランプ大統領とその政権は、2024年の大統領選で再選を果たすうえで最も役立ったとみられる問題に引き続き大きく賭け続けている。すなわち、移民問題だ。
トランプ政権とその支持者らは、10日に行われたカリフォルニア州ベンチュラ郡の合法的なマリフアナ農場への強制捜査の際のような連邦移民当局者と抗議デモとの対立を嬉々として取り上げてきた。
先月、共和党議員がトランプ氏の推進する非常に不人気な法案を可決した際、バンス副大統領は、移民税関捜査局(ICE)の歴史的な拡大と新たな移民執行規定が非常に重要であるため「他の全て」は「重要ではない」と主張した。
しかし、これは、トランプ氏とその仲間たちにとって、ますます悪い賭けになっているようだ。トランプ氏にとって素晴らしい問題であるはずのものを、トランプ氏がますます台無しにしたように見えてきた。そして、ICEの行動がその大きな部分を占めているようだ。
移民問題に関する最新の世論調査はギャラップによるものだが、その結果はトランプ氏の2期目のどの世論調査よりも悪いものだった。
6月に約1カ月にわたって行われた世論調査では、トランプ氏の移民政策に対する支持率は不支持が62%、支持が35%と大きく差が付いた。また、強く不支持とした回答は45%と、強く支持の21%の2倍以上となった。
無党派層も約7割が不支持だったことがわかった。
これはトランプ氏にとって、移民問題に関して、これまでで最悪の数字だ。だが、傾向としては明らかに減少傾向にある。特にギャラップのような質の高い世論調査ではその傾向が顕著だ。
6月に実施された公共ラジオNPRと公共テレビPBS、マリスト大学が実施した世論調査によれば、無党派層の59%がトランプ氏の移民政策に不支持を表明した。キニピアック大学の世論調査では無党派層の66%が不支持だった。
トランプ氏は、国境を通過する人の数が史上最低の水準であるにもかかわらず、移民問題でこれほど不人気な立場に追い込まれた。そして、データによれば、その不人気は主に、国外追放とICEに起因している。
具体的には以下のようになる。
キニピアック大学の世論調査によれば、全体の59%、無党派層の66%がトランプ氏の国外追放への対応に不満を抱いている。
キニピアック大学によれば、全体の56%、無党派層の64%がICEの業務のやり方に不満を抱いている。
マリスト大学の世論調査によれば、全体の54%、無党派層の59%がICEは移民法の執行で「やり過ぎている」と回答した(共和党員の5人に1人も同意した)。
ピュー・リサーチ・センターの6月の世論調査によれば、職場で不法移民を見つけるためにICEが捜査を強化することについて米国人の54%が反対した。賛成は45%だった。
米国人はまた、国外追放プログラムのより強引な側面のいくつかに反対しているようだ。
ピュー・リサーチ・センターによれば、強制送還手続き中の移民を収容する施設の数を大幅に増やすことについて、反対55%、賛成43%だった。フロリダ州に新設された物議を醸している収容施設「アリゲーター・アルカトラズ」をトランプ政権が称賛していてもだ。
ピュー・リサーチ・センターによれば、ほぼ2対1の割合で、移民を自国以外の国に強制送還することは「受け入れられない」と回答があった。これは政権の取り組みのもう一つの重要な部分だ。
世論調査では、エルサルバドルの刑務所に不法移民を強制送還することについても反対が61%で賛成は37%だった。エルサルバドルには何百人もの不法移民が適正手続きなしに送還されており、誤って移送された人もいた。例えば、その後、米国に帰国したキルマー・アブレゴガルシアさんなどだ。
こうした事態に人々がどれほど関心を持っているのかについては疑問も残る。トランプ氏が進める強制送還の物議を醸すいくつかの側面には不満を抱くかもしれないが、人々にとってそれほど重要な問題ではないかもしれない。
トランプ氏が賭けているのは、こういうことかもしれない。支持基盤が本当に望んでいることを推し進めることができるか、そして、不法滞在者を擁護しているように見えることで政敵に行き過ぎた行動を取らせることさえ可能かどうかだ。
だが、ホワイトハウスはどこかの時点で、これらの数字を見て、その戦術が裏目に出ているのではないかと心配し始めなければならない。
ギャラップの世論調査によれば、不法移民全員の国外追放を支持する米国人の割合は昨年の大統領選中には47%だったが、トランプ氏がそれを現実に追求している今では38%に低下した。
そして、ギャラップによれば、全体的に言えば、第2期トランプ政権は、21世紀で過去最高水準の移民への同情を生み出したといえるだろう。移住が「良いこと」と答えた米国人の割合は昨年の64%から79%に増加した。
米国人が大量の国外追放を支持するには、さまざまな条件やただし書きが付いていることは明らかだった。だが、トランプ政権はそれらを全て無視して、自ら招いた問題に突き進んでいるようだ。
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本稿はアーロン・ブレイク記者による分析記事です。