米国のトマト価格、14日に値上がりの可能性 関税のつけは消費者や飲食店に
(CNN) メキシコからの農産品輸入に対する米国の新たな関税をめぐり、トマトが値上がりすれば経営破綻(はたん)に追い込まれかねないとして飲食店が危機感を募らせている。
カリフォルニア州南部でアルゼンチン・イタリア料理店2店を経営するテレサ・ラゾさんは「あと3カ月で倒産だ」と頭を抱えた。
30年近くに及んだ米国とメキシコの貿易協定に代わり、14日からはメキシコから米国へ輸入されるトマトに20.9%の関税が課される可能性がある。そうなればスーパーで販売されるトマトもピザ店で使うトマトも値上がりして、規模の小さい店は廃業に追い込まれかねない。
トランプ大統領の関税政策は世界経済を混乱に陥れ、米国民は自国の経済の先行きに神経をとがらせる。
米労働統計局によると、2025年5月の時点でトマトの小売価格はポンド(約450グラム)あたり約1.7ドル(約250円)だった。しかしアリゾナ州立大のティモシー・リチャーズ教授の予想によると、新たな関税の影響でトマトは約10%の値上がりが予想され、需要は5%減る見通し。
米国はメキシコ産トマトの最大の輸出先。米農務省は6月のリポートで、新たな関税によって輸入量は減り、価格は上昇すると予測していた。
関税について米国の生産者からは、外国からの安い輸入品によって国産品の値段が下がる「ダンピング(不当廉売)」への対抗措置として支持する声もある。
米国とメキシコの間では1996年以来、協定に基づき実質的にトマトの最低輸入価格が定められていた。しかし米農務省は今年4月、「現行の協定ではメキシコからの輸入品の不当な価格から米国のトマト農家を守ることができていない」として同協定を離脱すると表明。代わってメキシコ産トマトの輸入に対して20.9%の関税が導入される。
関税がかき立てる不安と恐怖
関税のつけを払わされるのは消費者や飲食店かもしれない。
ラゾさんが営む店ではピザやパスタソースなどにトマトが欠かせない。「我々は値上げせざるを得なくなり、いままで週に3回外食していた人が、これからは週1~2回しか外食できなくなるかもしれない」とラゾさんは危惧する。
一方で、これまで米国産品のトマトのみを使っていて関税の影響を受けない企業もある。ハインツが米国内で販売するケチャップは国産のトマトのみを使用。ディジョルノの冷凍ピザソースもカリフォルニア産のトマトしか使っていないという。
飲食店の中にも、ロサンゼルスでピザ店を営むジャスティン・デ・レオンさんのように、価格転嫁は見送って自分で負担するかもしれないという店もある。

ロサンゼルスでピザ店を営むジャスティン・デ・レオンさん/Natasha Chen/CNN
しかしそうした余裕がある店ばかりではない。ラゾさんは国内の農家からトマトを調達しようとしているが、もし間に合わなければメニューの値上げを強いられるかもしれないと話す。
関税措置は直前になって変更されることも多く、ラゾさんは心の健康のために日々のニュースを追うことをやめた。関税が不安と恐怖をかき立てているとラゾさんは言い、「もうたくさん」と訴える。
飲食店は、チーズなどの食材に課された関税のために既にコストが増大しており、トマト関税は新たな頭痛の種になりかねない。「早く終わってくれることをただ願うばかり」とデ・レオンさんは語った。