シャチが人間にえさを分け与えてくれた瞬間の映像 その理由は?
(CNN) カナダの海洋生物学者チーム「ベイ・セトロジー」のエグゼクティブディレクターを務めるジャレッド・タワーズ氏が、一対のシャチを観察するため水中にカメラを設置したところ、奇妙な光景を目にした。若いメスのシャチが「弟シャチを撮影するために水中に設置していたカメラに近づき、口を開けて死んだ海鳥を出した」というのだ。
シャチは口を閉じ、タワーズ氏の反応をうかがうように動きを止め、死んだ海鳥が頭上に浮かんでくる間、水中にとどまっていた。そして数秒後、カメラに向かってくるりと回転しながら再び海鳥を飲み込んだ。
シャチが海鳥をはき出し、再び飲み込む様子
数年後、タワーズ氏は別の若いメスのシャチが同じ行動をとるのを目撃した。しかし今回は、「私のボートのすぐそばに、仕留めたばかりのゼニガタアザラシの子を落とした」という。
タワーズ氏によれば、2004年から24年の間にシャチが人間にえさを贈った事例は34件あった。
タワーズ氏はこの行動の理由について、一つの要因を挙げることは容易ではないとしながら、「根底にある主なメカニズムは、彼らが私たちにえさを与える余裕があるということであり、最も近い理由は、彼らが私たちについて探り、より深く知るためにそうしているということかもしれない」と語る。
記録されたケースのうち一例を除いた全てにおいて、シャチは最初、人間からの反応を待ち、その後、ほとんどのシャチがえさを回収したという。単にえさを放棄するシャチもいれば、再びえさを与えようとするシャチもいた。
ペットは飼い主に贈り物を持ってくる。動物同士が贈り物をし合う例も観察されている。しかし、これまで野生の捕食動物が人間に贈り物をしたという記録はほとんどなく、イルカの一種であるオキゴンドウとヒョウアザラシが人間にえさを与えたという事例が数件あるのみだ。
シャチは最も知能の高い部類の動物で、体の大きさに比べてより大きな脳を持つのは人間だけだという。また、シャチは他のクジラやイルカよりも、体の大きさに比べてはるかに大きな動物を捕食するため、より多くのえさを分け合える可能性がある。