孫の卒業式のためケニアからはるばる米国に駆けつけた祖父、翌日行方不明に

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リューベン・ワイサカさん(72)は米国を訪れた翌日の5月15日に姿を消した。所在は今も謎のままだ/Courtesy Emily Barua

リューベン・ワイサカさん(72)は米国を訪れた翌日の5月15日に姿を消した。所在は今も謎のままだ/Courtesy Emily Barua

(CNN) 米南部アラバマ州で今年5月、孫の高校の卒業式に出席しようとアフリカのケニアから駆け付けた男性が突然、姿を消した。地元警察の懸命な捜索にもかかわらず、男性の安否は今も不明のままだ。

リューベン・ワイサカさん(72)は孫の卒業式を6日後に控えた5月14日、ケニアから1万3000キロ以上のフライトを経て、息子一家が住む同州バーミンガム南郊の町カレラに到着した。スーツケースには、息子が若かった頃の色あせた写真や、息子と孫、自分用にそろえたアフリカ柄プリントのシャツなど、心のこもった手土産を詰め込んでいた。

ワイサカさんが孫のバイロン・バルアさんにみせるために持っていた昔の写真。ワイサカさんと映る息子ふたりのうち、右がウィリングトン・バルアさん/Courtesy Emily Barua
ワイサカさんが孫のバイロン・バルアさんにみせるために持っていた昔の写真。ワイサカさんと映る息子ふたりのうち、右がウィリングトン・バルアさん/Courtesy Emily Barua

だが、その3世代が誇らしげにそろいの服を着て、一緒に並ぶチャンスはなかった。

ワイサカさんは妻のエリザベス・バルアさんと米国に降り立った翌朝、息子ウィリングトン・バルアさんの家から徒歩で出かけたきり、姿を消した。

バルア家の玄関カメラは、ワイサカさんが午前11時8分、車庫の前のスペースに出てくる姿をとらえていた。カーキのズボンに青と白のチェックのシャツ、黒い靴というこざっぱりした服装だった。

その約30分後、約3キロ離れたガソリンスタンドへ入っていくワイサカさんが、防犯カメラの映像に映っていた。店員に向かって手を振ってからトイレに入り、裏口から出て行ったのを最後に、行方が分からなくなった。

その5日後に高校を卒業した孫のバイロン・バルアさん(17)は、「祖父はここに着いてすぐにいなくなってしまった」と話す。

バイロン・バルアさん(17)は祖父不在のまま、5月20日に高校の卒業式を迎えた。隣は父のウィリングトンさん/Courtesy Emily Barua
バイロン・バルアさん(17)は祖父不在のまま、5月20日に高校の卒業式を迎えた。隣は父のウィリングトンさん/Courtesy Emily Barua

それから7週間が過ぎた今も、手がかりはつかめていない。カレラはバーミンガムの南約48キロに位置する人口1万9000人前後の町。警察はヘリコプターやドローン(無人機)、オフロード車、追跡犬、熱感知用の赤外線カメラを投入し、町の周辺に広がる雑木林をくまなく捜してきたが、今のところ何も見つかっていない。

ウィリングトンさんは「どうして息子の卒業式に両親を呼んだのかと、後悔することもある。私がなにか別の行動を取れたのではないかと、つい自問してしまう」「私が招いていなければ、父は無事だったかもしれない」と語った。

家族はワイサカさんの足取りを追い、防犯カメラの映像を何度も見直して手がかりを探した。身長165センチ、体重73キロの男性が、ほとんど知る人もいない外国で、白昼に姿を消すことなどあり得るだろうか。

家族はまた、ワイサカさんに実は認知症などの病気があり、旅先のストレスが発症のきっかけになった可能性も考えた。認知症の患者がふらりと出かけてしまうのは珍しい症状ではなく、特に慣れない環境ではよくある行動だと、専門家らは指摘する。

娘のエミリー・バルアさんは、本人はとても怖い思いをしているに違いないと話しながら次第に声を落とし、長いため息をついた。

さらに「希望を持ちたい。そう本気で思う」「でも、父は暑さの中でどこかに座り込んで眠ってしまい、二度と目覚めなかったのではと考えてしまう時もある」と話した。

家族はワイサカさんがいなくなるまでの様子を振り返り、異変の兆候を見逃していなかったかと考え続けている。

米国行きの機内で普段と違う様子も

今振り返ると、ワイサカさんは米国へ向かう間、落ち着きのない様子だった。ウィリングトンさんによると、家族は当時、18時間の移動に疲れたせいだろうと考えた。

夫妻のフライトは5月13日にケニアの首都ナイロビを出発した。ワイサカさんは空港まで自家用車の小型セダンを運転し、独フランクフルト経由で米南部ジョージア州アトランタへ向かうルフトハンザ航空の便に搭乗した。

空港へ向かう直前には、いつも通りに庭のごみを拾い、愛犬のジャーマンシェパード5頭にえさをやって犬舎を掃除した。ウィリングトンさんによれば、留守中の世話係も手配してあった。

フランクフルトまでのフライトは何も問題なかったが、アトランタへ向かう途中で様子がおかしくなった。ワイサカさんはわけの分からないことを言い出して興奮し、座席に引き留めようとする妻のエリザベスさんに客室乗務員の助けが必要だったという。

ワイサカさんはアトランタに着くまで落ち着かない状態が続いた。混乱した様子で、空港のエスカレーターに逆行しようとして転倒し、ひざを傷めた。ガソリンスタンドの防犯カメラにも、この時のけがで足をひきずる様子が映っていた。

夫妻がカレラに着いた後、ウィリングトンさんはワイサカさんを救急外来へ連れて行った。頭部のCTスキャンや血液検査の結果に異常はなく、ワイサカさんは早朝に病院を出た。

時差ぼけに疲れが重なったワイサカさんは、シャワーを浴びて仮眠を取った。そして目玉焼きと紅茶で朝食にした後、外へ出かけた。初めはエリザベスさんも後を追ったが、ガレージの扉を閉めようと駆け戻った間に、ワイサカさんを見失ったという。

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