15社搭乗で100万マイル付与、「マイレージ長者」たちの挑戦秘話
ソウルとブカレストも大変気に入って、ブカレストに改めて滞在する旅をすでに計画中だという。「共産主義時代のコンクリートの建物が集まっていたかと思うと、石畳の通りにカフェやバーが並ぶ旧市街が現れる」と、魅力を語った。
空港の中では、ストックホルムとアムステルダムの落ち着いた雰囲気にほれ込んだが、ブカレストとホーチミンでの待ち時間はきつかった。米国土安全保障省(DHS)の職員からは詳細な質問を受けた。「米国人はSir(サー)、Ma’am(マーム)と敬称を使いながら、相手を居心地の悪い気分にさせるのが得意だ」と、コリンズさんはこぼす。
100万マイルのために費やした金額は

リーさんは苦労して獲得したマイルを、パリへのビジネスクラスの旅につぎ込んだ/Nara Lee
100万マイルを獲得するために、2人が費やした金額の合計はどのくらいだったのか。
コリンズさんが使ったのは計4784.54ポンド(約92万円)。このうち航空運賃が3947.88ポンド(約76万円)を占めた。個人経営の質素なホテルに滞在したので、宿泊費は計234.47ポンド(約4万5000円)。ロンドン・ヒースロー空港での駐車料金として支払った256.70ポンド(約4万5500円)よりも少なかった。
リーさんの場合は航空運賃が500万ウォン(約52万円)、食費と宿泊費が約100万ウォン(約10万円)だった。
2人が利用した航空会社への評価はどうか。コリンズさんはコストパフォーマンスのトップに中国東方航空を挙げ、逆に最もコスパが悪いと感じたのは厦門(アモイ)航空だと語った。好感度が最も低かったのはケニア航空で、「悪くはなかったが、あちこちがやや古びた感じ。ヘッドホンが穴から抜けそうで、押さえていなければならなかった」と話した。
リーさんのお気に入りは言語の違いに困らない大韓航空と、ガルーダインドネシア航空。乗務員の温かい歓迎に感激したという。最も好感度が低かったのはブカレスト行きのKLMだと話し、「機内が騒がしかったのに乗務員が何も対応しなかった。サンドイッチの機内食にもがっかりした」と説明した。
「ばかげたことをやってみよう」

リーさんもコリンズさんもソウルを経由した。SASは9月にはソウルとコペンハーゲンを結ぶ便を就航させる予定だ/Kichul Shin/NurPhoto/Getty Images
キャンペーンへの挑戦は、意味のあることだったのだろうか。
SASにとってはもちろん有意義だったと、バックストロム副社長は主張する。900人に100万マイルを贈呈したことによる最終的なコストはマイルが使われた後で確定するが、すでに知名度アップの効果が出ている。たとえばリーさんはSASのことを全く知らなかったが、マイレージプログラムの会費を払うファンになった。今年9月には、新たにコペンハーゲンとソウルを結ぶ便も就航する。
リーさんは今やスカイチームの熱心なファンでもある。「スカイチームのどの航空会社も、今は親しい隣人のような感じ」「搭乗するたびに、キャンペーンへの挑戦に疲れ切って片隅の座席に丸まった過去の自分が目に浮かぶ」と話す。
コリンズさんはまだ獲得したマイルを使っていないが、チャレンジは落ち込んでいた時期から脱出する道筋となった。
妻のシェリルさんも「とても大きな変化があった気がする」と話し、かつてのようにやる気に満ちた夫が戻ってきたと喜んでいる。
もちろん、コリンズさんにとってはこれから一生、語り続ける体験となるだろう。思い出すのは睡眠不足や極度の緊張、疲労ではなく、楽しかった場面ばかりだ。コリンズさんはそう語り、「話のネタを手に入れるには、ばかげたことをやってみればいい」と胸を張った。