15社搭乗で100万マイル付与、「マイレージ長者」たちの挑戦秘話
キャンペーンの記事を読んだのは「絶妙なタイミング」だったと話す。当時はちょうど、それまで手掛けていた商売をたたみ、ほかの仕事に手をつけながらも「家でぶらぶらしていた」時期。「中年の危機」だったという。
妻のシェリルさんからは一人旅に出ることを勧められ、「さっさと出掛けて、アンデスかどこかに登ってきたら」と言い渡されていた。
妻もそう言っているし、このキャンペーンなら達成感が得られるだろう。しかも1人でできる。これこそ自分が求めていたことだ、と考えた。
コリンズさんはいくつかのルールを決めた。その一つは、エコノミークラスだけを使うこと。頑張った分だけ見返りを得ることが目的なので、ビジネスクラスではハードルが下がってしまうと考えた。「座席を倒してシャンパンを楽しむフライトと、安い座席でじっと耐える旅は違う」と、コリンズさんは言う。
もう一つは、手荷物を機内持ち込みの分だけにすること。荷物を預けて乗り継ぎを繰り返せば、「災難」に見舞われる恐れがあるからだ。
コリンズさんは普段、子どもたちの学校の送り迎えを担当していた。そういった実生活の妨げになってはいけないというのが、最後のルールだった。一度に世界を一周するのではなく、英国の自宅を拠点に行ったり来たり、地域を分けて何回も旅行した。
まず米国とメキシコをフランス経由で訪れた時は、金曜日の朝に出発して日曜日の夜には戻り、月曜日に子どもたちを学校に送って行ける日程を組んだ。
続いてはスペイン・マドリードへの家族旅行から、欧州の航空各社を使って足を延ばした。パリの後、ルーマニアのブカレストで一泊し、アムステルダム経由でストックホルムへ飛んだ。
次の旅では、週末の間に米アトランタからメキシコ市へ、さらに再びパリへと駆け回った。
4回目は中東からアジアを巡る長旅。サウジアラビアのジッダ、ジャカルタ、シンガポール、ホーチミン、台北、中国のアモイと上海、ソウル、中国・広州、そしてバンコクから再び上海を回り、ロンドンへ戻った。
搭乗したのは計19社の22便で、このうち16便がスカイチームのフライトだった。体力を維持することが難題だったと、本人が語るのもうなずける。
機内でのサバイバル術

コリンズさんは手荷物を機内持ち込みの分だけにして、エコノミーでの長時間フライトに欠かせない旅行者用の枕やアイマスクなどの必需品をまとめた/Barry Collins
勇気ある2人の旅人が、それぞれの旅から学んだことは何だろう。
まず機内で睡眠をとるコツ。コリンズさんのお気に入りグッズは、特殊な形に作られたTRTLのトラベルピローだ。
眠りたいなら、フライトの1時間前に水分を取るのをやめ、搭乗した時点で最後にもう一度、トイレに行っておくのがいいという。
リーさんは「機内で眠る最大のコツは、とにかく疲れ切ること」と笑う。「エコノミーでは寝にくいと感じたら、それはたぶん疲れが足りないから。私はとても疲れていたので、特に努力せずにどこでも眠れた」
コリンズさんとリーさんが旅先で出会うことはなかったが、2人がそろって口にしたのは、カルチャーショックがいい経験になったという感想だ。
コリンズさんは、ジッダの空港でサウジのイメージが変わったと話す。「だれもが完璧な英語を話し、案内はアラビア語と英語の両方で表示され、空港もラウンジも素晴らしかった」と称賛した。