新作映画「スーパーマン」は「意識高すぎ」? 監督の「移民」発言めぐり論争
両氏は第2次世界大戦が迫るなかで「スーパーマン」を描いた。物語の1ページ目には、スーパーマンが「虐げられた人々の擁護者」と紹介されている。
「スーパーマンの初期の冒険は弱者のため、虐待を受ける女性たちのため、搾取される炭鉱労働者たちのための戦いや、腐敗した政治家たちに対する戦いだ」と、フィンガロス氏は語る。
同氏によれば、米国が第2次大戦でナチスドイツと戦う前から、スーパーマンはコミック本のページ上で戦っていた。
「スーパーマンは米国の外からやって来ながらも、米国の最も優れた面を体現している移民」だという。
活動団体や学者らはスーパーマンに何を見てきたか
歴史研究家らや移民支援団体も、同じとらえ方をしてきた。
コミック史の専門家クレイグ・ディス氏は10年以上前、米中西部オハイオ州のライト州立大学で、スーパーマンとワンダーウーマンの移民歴に着目した討論会を開催。当時の学生たちの共感を呼んだ。

もともと1949年に制作され、名誉毀損(きそん)防止同盟の分派によって学校に配布されたイラスト。DCのアートチームは2017年、このポスターをデジタル復元した/From DC
2013年には米国のNPO「デファイン・アメリカン」と「ハリー・ポッター・アライアンス」がSNS上で「#SupermanIsAnImmigrant(スーパーマンは移民)」というハッシュタグを使い、移民らに向けて自撮り写真や家族の体験談を共有するよう呼び掛けた。
デファイン・アメリカンの設立者で、自身もかつて不法移民だったホセ・アントニオ・バルガス氏らは先週、米芸能誌ハリウッド・リポーターを通し、ガン氏がスーパーマンに対する自分の意見を故意に政治化しているとの批判に反論。「事実は政治化できない」と主張し、「スーパーマンはこの87年間ずっと『不法移民』だった」と述べた。
「スーパーマンは移民」と紹介されないこともある
とはいえ、スーパーマンの出自は物語の一部にすぎない。原作者にとっては特殊能力を説明する便利な仕掛けでもあったと、フィンガロス氏は指摘する。
作品の時代や作者によっては、スーパーマンが移民だとは明記されていないケースもある。

1978年の映画では、スザンナ・ヨークとマーロン・ブランドがスーパーマンの両親を演じた/Warner Bros/DC Comics/Kobal/Shutterstock
ただフィンガロス氏によれば、スーパーヒーローの多くはよそ者だ。そして長年の人気を誇るヒーローに共通するのは、あらゆる地位や職業の人々から共感を得ている点だという。
つまり私たちはだれでも、スーパーマンの中に自分自身を見いだすことができる。スーパーマンについて、今もこれほど多くの人々が強い意見を持っている理由は、そこにあるのかもしれない。