米テスラが抱える、あまり注目されない大問題
(CNN) 米電気自動車(EV)メーカーのテスラは長年、ただEVを販売するだけで競合他社から数十億ドルもの利益を得てきた。しかしその棚ぼた的な収入は、同社が最も必要としているまさにこの時、消え去ろうとしている。
テスラによる規制クレジットの販売は、売り上げと利益の低迷に直面する同社にとって大きな収入源であり続けている。既存の自動車メーカーは、テスラからクレジットを購入することでガソリン車の販売を続けている。クレジットを購入しなければ排ガス規制への違反となり、罰金を科せられるからだ。
しかし、今月初めに可決した共和党の税制・歳出法案により、自動車メーカーへの金銭的ペナルティーが撤廃された。そのため今後は、テスラからこれらの規制クレジットを購入するインセンティブが完全になくなる。
規制クレジットの喪失は、テスラを率いるイーロン・マスク氏とドナルド・トランプ米大統領の同盟関係及びその後の対立、あるいはEV購入者向けの税額控除廃止ほど注目されてはいない。しかし、テスラのバランスシートからこれらの規制クレジットがなくなることは、同社の財務の将来にとって破滅を意味し、場合によっては継続的な損失につながる可能性がある。
ウィリアム・ブレア・アンド・カンパニーのアナリストがまとめた最近の報告書によると、テスラの規制クレジットに対する市場の需要がなくなることで、クレジット収入は来年75%減少、2027年までに完全に消滅する見通しだという。
これは「(テスラの)収益性に直接的な打撃を与える」と報告書は述べている。
テスラは、規制クレジット販売の変更に関するCNNのコメント要請に応じなかった。
これまで米国は多くの政府と同様に、自動車会社に環境規制を満たすよう奨励するためのクレジット制度を設けてきた。排出基準を満たした自動車会社にはクレジットを付与し、満たさなかった会社には罰金を科した。ガソリン車を主に販売する自動車メーカーは、テスラのような低排出車を販売する自動車メーカーからクレジットを購入することで、罰金を回避することができる。
テスラは2019年以降、規制クレジットの販売だけで106億ドル(約1兆5000億円)の収益を上げている。今年初めのように、クレジット販売が同社の純利益総額を上回った四半期もあった。つまり、クレジット販売がなければ同社は赤字になっていたことになる。
テスラの利益率は22年初頭にピークを迎えて以来低下しており、クレジット販売の重要性が高まっている。
既存の自動車メーカーがテスラとの長期契約を順守すれば、クレジット販売はすぐには終了しないかもしれない。しかしウォール街で最もテスラに厳しいアナリストの一人、ゴードン・ジョンソン氏は、一部の自動車メーカーはこうしたクレジット購入契約から早期に抜け出そうとするかもしれないと指摘する。
ジョンソン氏の予測によれば、テスラのクレジット販売は今年の第3四半期か26年初めには消えてしまう恐れがある。そうなれば、テスラは再び四半期純損失を計上し始める可能性があるという。
「規制クレジットの販売がなければ、テスラは中核事業で損失を出すことになる」(ジョンソン氏)