新作映画「スーパーマン」は「意識高すぎ」? 監督の「移民」発言めぐり論争

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新作映画「スーパーマン」の1シーン/Warner Bros.

新作映画「スーパーマン」の1シーン/Warner Bros.

(CNN) 危機に陥った故郷から米国へ送られ、中西部カンザス州の家庭で育てられた赤ちゃん――。コミックやテレビ、映画で何度も紹介されてきたスーパーマンの生い立ちだ。ところが新作映画「スーパーマン」のジェームズ・ガン監督が最近、「スーパーマンは移民」と発言したことに対して右派メディアなどが反発し、論争に発展している。

ガン氏は英紙タイムズとのインタビューで、「スーパーマンは米国の物語だ」と語った。「よそから来てアメリカに住んだ、1人の移民の話。だが私にとっては大方、ごく普通の人間の優しさに価値があること、私たちがそれを失ってしまったことを伝える物語だ」

トランプ米政権が移民の取り締まりを強化するなかで、この発言には右派のメディア人らが即座に反発した。米フォックス・ニュースは大見出しで、「スーパー」の後に「意識が高い」ことを揶揄(やゆ)する「woke(ウォーク)」という単語を付け、「スーパーウォーク」(意識高すぎ)な映画だと批判。専門家らも次々と意見を述べた。

第1次トランプ政権で大統領顧問を務めたケリーアン・コンウェイ氏は「小言を言われたり、だれかのイデオロギーを押し付けられたりするために映画館へ行くわけではない」と批判した。

かつてテレビドラマ「新スーパーマン」の主役を演じた俳優で保守派コメンテーターのディーン・ケイン氏は、米芸能ニュースサイトTMZにガン氏のコメントは気に入らないと語り、作品の宣伝に移民を持ち出した判断ミスは高くつくかもしれないと警告した。

だが今のところ、その兆候はない。「スーパーマン」は初週末興行収入が全米で1億2200万ドル(約180億円)を記録し、首位に立った。

映画「スーパーマン」の撮影現場。ニコラス・ホルト、デビッド・コレンスウェット、そしてジェームズ・ガン監督の姿が見える/Jessica Miglio/Warner Bros.
映画「スーパーマン」の撮影現場。ニコラス・ホルト、デビッド・コレンスウェット、そしてジェームズ・ガン監督の姿が見える/Jessica Miglio/Warner Bros.

コミック版「スパイダーマン」の編集を長年手掛け、スーパーヒーローものコミックについての著書もある評論家ダニー・フィンガロス氏はこう語る。「スーパーマンが移民あるいは難民だったというのは、当初からキャラクター設定の一部だった。ガン氏が思いついたり、ねじ込もうとしたりした話ではない」

1938年の第1話には、スーパーマンが滅亡する架空の惑星クリプトンから送り込まれたという記述があった。

「自由意思で移民になったわけではなく、やむを得ず移住した、つまり難民だ」と、フィンガロス氏は説明する。「地球へ、そして米国へやってきて溶け込み、根っからの米国人となった人物だ」

同氏によると、これが物語の核心となっている背景にはもっともな理由がある。

スーパーマンの作者は移民体験者だった

例えばコミックの作者たちだ。原作のジェリー・シーゲル氏と作画のジョー・シャスター氏はいずれも、欧州で高まる反ユダヤ主義から逃れてきたユダヤ系移民の子どもだった。

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