ロシアの夏季攻勢で高まるウクライナの危機
ここ数カ月のロシア軍は小規模な集落の制圧など、戦略的な成果には乏しいものの、ウクライナの分析グループ「ディープステート」のオープンソース・マッピングによると、進撃のペースは加速している。ウクライナにとってさらに危険なのは、最近の進撃が戦略的に有利に働いており、北方のポクロフスク、コンスタンチノフカ、クピャンスクの包囲は、今後数週間の明白な脅威となることだ。
これら三つの町の陥落は、ウクライナにとって三つの別々の危機をもたらすだろう。第一に、ウクライナは当該の都市からドネツク州の残りの支配地域を防衛しており、各都市がなければ、ウクライナ軍は避難所や補給拠点を失うことになる。第二に、これらの町がロシアに奪われれば、相当数のロシア軍が、依然としてウクライナの支配下にあるドネツク州最大の都市であるクラマトルスクとスロビアンスクへの攻勢を強めることが可能になる。第三に、この喪失はウクライナ軍を無防備な状態に陥れ、大半が開けた状態にある農地での防衛を余儀なくされる。ドネツク州と主要都市ドニプロの間にあるこれらの土地には、町がほとんど存在しない。
ロシア軍の進撃の速さ、あるいは少なくとも攻撃用ドローンによる民間地域への侵入の拡大は、29日に東部の町ドブロピリアでCNNが目撃している。この町は2週間前にロシアのドローンによる継続的な攻撃を受けた。攻撃は民間の標的に多数命中した。
さらに北、ウクライナ第二の都市ハルキフの東約97キロに位置するクピャンスク近郊では、ロシア軍が町の北部を急襲。西方に向かうウクライナ軍の主要補給路を脅かし、ラドキフカ村を占領した。同市内のウクライナ情報筋は状況について「非常に急速に変化している」と述べ、ロシアのアナリストはロシア軍が町郊外にいると述べている。
ウクライナの人員不足、ウクライナ政府とホワイトハウスの関係の混乱、そして不安定な兵器供給といった要因が重なり、ロシアの夏季攻勢の勢いと粘り強さには歯止めがかからないのが実情だ。攻勢はもはや漸進的なものではなく、紛争の様相を一変させている。そしてプーチン氏は自身の目標のいくつかに急速に近づいている。