ANALYSIS

【分析】ウクライナ和平めぐり対ロ制裁猶予を短縮したトランプ氏、動じないロシア

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ロシアの攻撃で損壊した、ウクライナ首都キーウの建物/Yevhenii Zavhorodnii/Global Images via Getty Images

ロシアの攻撃で損壊した、ウクライナ首都キーウの建物/Yevhenii Zavhorodnii/Global Images via Getty Images

(CNN) 最近の発言から察するに、トランプ米大統領のクレムリン(ロシア大統領府)に対する忍耐は、ますます尽きつつあるようだ。

英スコットランド・ターンベリーにある自身のゴルフリゾートで、英国のスターマー首相とともに記者団に応じたトランプ氏は、2週間前に課したロシアに対する50日間の期限を突如として短縮した。ロシアは期限内にウクライナとの和平合意に同意しなければ、新たな厳しい経済制裁に直面することになる。

「今日から10日か12日くらいを新たな期限にする」とトランプ氏は28日、記者団に語った。「待つ理由はない。寛大でありたいとは思うが、何の進展も見られない」

そうした状況下でもトランプ氏が10〜12日間制裁の実施を先延ばしにした理由は明らかでない。この制裁によって、ロシアには高額の関税が課され、ロシア産原油を購入する国々には厳しい二次関税が課される。

トランプ氏のウクライナ戦争に対する姿勢は二転三転してきた。数カ月にわたりウクライナとロシアの双方を非難し、その態度は揺れ動いていたが、ここに来てクレムリンとプーチン大統領の行動に批判的なトーンへと傾きつつある。今回の発言はその最新の兆候といえる。

トランプ氏は28日、「何度も話はついたと思っていたのに、プーチン大統領が出てきて、(ウクライナ首都)キーウのような都市にロケット弾を撃ち込み、介護施設にいる多くの人々を殺害したりする」とも語っていた。

トランプ氏は関税と制裁を改めて警告し、クレムリンが受け入れるかどうか考えをめぐらせた。「常識的に考えれば、合意しようと思うだろう。どうなるかはじきに分かる」

しかし、何年にもわたり妥協を拒んできたロシアにこの緊張感は伝わっていない。

クレムリンは最大限の目標を達成するまで戦争を終えることはないと、これまで一貫して述べてきた。この目標には併合したウクライナ領のうちの未制圧地域の掌握や、戦後のウクライナに対する軍事・外交政策の厳格な制限が含まれる。制限は事実上、ウクライナをロシアに従属させる狙いだ。

ロシアはすでに世界で最も多くの制裁を受けている国の部類に当てはまる。そのロシアに対する、さらなる制裁の脅しがどれほどの影響を及ぼすかは疑わしい。クレムリンは目標を達成するためなら、どんな犠牲を払うこともいとわないように見える。

今回トランプ氏が期限を数週間早めたところで、クレムリンの強硬な計算に影響を及ぼすことはないだろう。特に、ロシア国内ではトランプ氏が打ち出した制裁は無力、つまり実現不可能と広く見なされていることを考えればなおさらだ。

たとえば、ロシアからの輸出品に対する100%関税というトランプ氏の脅しも、対米貿易額が年間数十億ドル程度しかないロシアにとっては、実質的な意味を持たないとされる。

より重要なのは、ロシア産原油の購入国に対して懲罰的な関税、つまり二次制裁を課すというトランプ氏の脅しだ。だが、その主要な輸入国はインドと中国で、トルコや一部の欧州諸国も大口の顧客となっている。ロシアでは、いくらトランプ氏であってもウクライナの問題をめぐって世界的な貿易戦争に突入することはないとの見方が強い。

しかも、中国やインド、トルコといった国々すべてがそろってロシア産原油の購入を止めるというあり得ない事態が実現したとしても、ロシアの供給が失われれば市場が受ける衝撃は計り知れない。原油価格の急騰や、世界的なインフレ、米国内でのガソリン価格の上昇を招く可能性がある。

今回の発言以前から、クレムリン関係者はトランプ氏の最後通告を公然と嘲笑していた。

ロシアの老練なラブロフ外相は今月、「50日! 以前は24時間だったり、100日だったりした。我々はそうしたすべてを切り抜けてきた」と一蹴した。

今回の10~12日という新たな猶予期間をめぐっては、反発が高まっている。

著名なロシアの政治学者セルゲイ・マルコフ氏はテレグラムに「トランプの最後通告に対するロシアの反応は、過去500年間にわたって全ての最後通告に対して取られてきたものと同じだ」と投稿し、こう続けた。「消えうせろ! くたばれ」

本稿はCNNのマシュー・チャンス記者による分析記事です。

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