観光客殺到で回転ゲート設置、住民の「インスタ映え阻止」が逆効果になった理由 イタリア

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インスタグラム用の写真を撮ろうとする観光客の行列に不満が高まり、土地所有者らはドロミテに回転式のゲートを設置した/Carlo Zanella

インスタグラム用の写真を撮ろうとする観光客の行列に不満が高まり、土地所有者らはドロミテに回転式のゲートを設置した/Carlo Zanella

(CNN) 北イタリアのアルプス山脈に位置するドロミテのハイキングコースで、殺到する観光客に業を煮やした地元住民が「インスタ映え阻止」を狙った回転式ゲートを設置した。狙い通りにいけば、これでインフルエンサーを食い止められるはずだった。

地元アルトアディジェ山岳会のカルロ・ザネッラ会長によると、SNSトレンドのせいで何十万人もの観光客が押し寄せるようになり、インスタ映え写真を撮ろうと私有地に無断侵入する観光客が続出した。

そこで地元の農家が回転式ゲートを設置して、入場料5ユーロ(約860円)を払わなければセチェーダ山などのインスタ映えスポットに到達できないようにした。

この数週間の間にSNSに投稿された写真には、1日に最大で4000人の行列ができる様子が映っている。ところがそうした写真は観光客を思いとどまらせるどころか、逆に引き付ける原因になった。

「メディアで回転ゲートのことが取り上げられて、みんなが話題にしている」とザネッラ会長は言う。「人々はみんなが行くところへ行く。まるで羊だ」

イタリアの法律では、アルプスやドロミテのような自然公園は入場無料とすることを義務付けている。しかし回転式ゲートを設置した土地所有者らによれば、今のところ当局から違反は通告されていないという。

土地所有者の1人は地元紙の取材に対し、自分たちの主張を訴えるため、観光客から料金を徴収することにしたと語った。

「毎日大勢の人たちがやって来て、みんなが私たちの土地を通ってごみを残していく」「私たちは助けを求めて声を上げていた。地元自治体の対応を期待した。しかし何もなかった。新聞に載るのはゴシップばかり。確かなものは何もない。我々は警告書さえ受け取っていない。だから先へ進むことにした」

山がこんな状況であってはならない

ザネッラさんは、かつて大好きだった夏のアルプス登山をしなくなったといい、今は自分の土地を通過する観光客から入場料を徴収する土地所有者を支援している。入場ゲートの維持費は政府が負担すべきだとザネラさんは訴え、混雑する週末に観光客から10ユーロの入場料を徴収しているベネチアを例に挙げた。

「入場料を5ユーロから100ユーロに引き上げたっていい」「旅行インフルエンサーのアカウントは閉鎖だ」とザネッラさんはCNNに語った。

過剰な観光客は迷惑なだけではない。無知なSNS観光は身の危険を伴うこともある。

「昔は登山客といえば準備を整えて登山に適した服装で来ていた。特にドイツ人は地図を携帯し、目的地を知っていた。一方、イタリア人はただ出かけてケーブルカーに乗る」

「今は日傘をさしてサンダル履きでセチェーダ山に登り、ケーブルカーが運休していてリフトの運行時間も確認していなかったために立ち往生する人たちがいる。山がこんな状況であってはならない」

一方、地元の観光業界は問題が誇張されすぎだと主張して、回転式ゲートを閉鎖させるよう地元当局に訴えている。地元の観光局はパークレンジャー4人を雇って観光客が遊歩道から外れたり、草原を横切ったり、ドローンを飛ばしたりしないよう徹底させているという。

地元観光局のルーカス・デメッツ会長は「状況は大幅に改善した」とCNNに説明し、「ごみ問題も言われるほど深刻ではない。かなり減少している」と主張する。

それでも周辺では山中への車の乗り入れを阻止するために駐車場が次々に設置され、登山客はシャトルバスの利用を義務付けられている。駐車場を利用できる台数を制限したり、写真撮影目当ての観光客を減らす狙いで車1台につき40ユーロの徴収を始めた地域もある。ドロミテ山地がある南チロル地方の知事は政府に対し、壊れやすいアルプス山脈の生態系を保護するための規制を設けるよう求めている。

水着姿の街歩きに罰金も

迷惑な観光客が問題になっているのはイタリア北部にとどまらない。今年の夏は海辺のリゾートなどイタリア各地で観光客の迷惑行為を取り締まる新たな条例が制定されている。

場所によっては、水着姿や上半身裸で街を歩けば500ユーロの罰金を徴収される。下品または「わいせつ」と判断された服装に対して25ユーロ以上の罰金が科されることもある。

裸足で歩くことを禁止する街や、喫煙やマットなしで寝ころぶことを禁止するビーチ、海水浴客の入場制限を打ち出したビーチもある。

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