インド人看護師がイエメンで死刑判決、週内にも執行か 家族が減刑に奔走
(CNN) 内戦が続くイエメンで死刑判決を受けたインド人看護師ニミシャ・プリヤさんの家族が、16日にも執行が予定されている死刑を減刑しようと時間との闘いを続けている。この事件はインドのメディアでも大きく報じられている。
プリヤさんは2020年にイエメン首都サヌアの裁判所からイエメン国籍のビジネスパートナーを殺害したとして死刑判決を受けた。遺体は17年に貯水タンクで見つかっていた。内戦下で首都を実効支配する反政府武装組織フーシとインド政府の間には正式な外交関係がなく、家族の取り組みは難航している。
死刑執行が迫る中、インドのメディアは連日この問題を大きく取り上げている。人権団体もフーシに対し、死刑を執行しないよう求めている。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは14日、「死刑は究極の残酷で非人道的かつ品位を傷つける刑罰だ」とし、すべての死刑執行を直ちに停止し、プリヤさんの判決を含む全ての死刑判決の減刑を求めた。
今回の事件でプリヤさんの家族を支援する社会福祉活動家サミュエル・ジョセフさんによれば、イエメンのイスラム法に従えば、被害者の遺族が「ディヤ(血の代償)」と呼ばれる賠償金を受け取って加害者を赦免すればプリヤさんは恩赦を与えられる可能性があるという。1999年からイエメンに住むインド人のジョセフさんは「私は楽観的だ」と述べ、協力者がおり、インド政府も動いていると言い添えた。
ジョセフさんによれば、プリヤさんは、ビジネスパートナーに致死量の鎮静剤を注射したとされている。プリヤさんの家族は、自衛のためだったとして主張。ビジネスパートナーは内戦勃発後にプリヤさんに暴力を振るい、パスポートを奪ったという。
裁判はアラビア語で行われ、通訳は付かなかった。
活動家や弁護士のグループはプリヤさんの釈放のための資金集めと被害者家族との交渉を目的として2020年に団体を設立した。活動家で、同団体のメンバーのラフィーク・ラブタールさんによると、これまでに約500万ルピー(約860万円)が集まったが、「インド大使館も公館もない国での交渉は困難だ」と話す。
最近では、プリヤさんの地元のケララ州の政治家らが、インドのモディ首相に介入を求めている。ケララ州首相はモディ氏宛ての書簡で「同情に値する事案だ」として支援を訴えた。
プリヤさんは08年にイエメンへ渡り、現地の病院で看護師として働いた。14年には夫の支援を受け、家族や友人から資金を借り、サヌアにクリニックを開業した。
夫のトミー・トーマスさんはCNNの取材に対し、「私たちは普通の幸せな結婚生活を送っていた。妻はとても愛情深く、勤勉で、何事にも誠実だった」と語った。
だが、プリヤさんの希望は数十年にわたってイエメンを悩ませてきた政治的紛争と混乱に見舞われた。
14年にフーシが首都を制圧し、国際的に承認されてサウジアラビアの支援を受けていた政府を追放した。15年までに紛争は破滅的な内戦へと発展し、国は分裂して不安定な状況に陥った。
治安情勢の悪化により、外国人にとってイエメンは生活と仕事がますますしづらくなった。多くの外国人が退避する中、プリヤさんは事業を守ろうととどまることを決意した。
アムネスティによると、24年に世界で死刑執行が最も多かった上位5カ国にイエメンは入っている。フーシ支配地域でも少なくとも1件の執行が確認されたが、実際はさらに多い可能性があるという。
プリヤさんの母親は裁判費用を捻出するため自宅を売却し、交渉のため1年以上前からイエメンに滞在している。夫と娘はケララ州で帰国を待ち続けている。
夫のトーマスさんは「妻はとても優しく、愛情深い。だからこそ、私は彼女と一緒にいて、最後まで支え続ける」と話している。