チベット仏教の最後の指導者にはならず、ダライ・ラマが誓う

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チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が後継者選定で「輪廻転生」制度の存続を明言した/Sanjay Baid/AFP/Getty Images

チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が後継者選定で「輪廻転生」制度の存続を明言した/Sanjay Baid/AFP/Getty Images

印ダラムサラ/香港(CNN) チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は自身の死後、後継者が現れると明言し、何世紀にもわたる伝統が引き継がれていくとの認識を示した。こうした伝統はかねて、チベットの将来を巡る中国共産党との対立の火種となっている。

ダライ・ラマは2日、インド北部ダラムサラに集まった宗教的指導層たちに向けた動画メッセージの中で上記の内容を宣言した。ノーベル平和賞受賞者でもあるダライ・ラマは、中国共産党の支配に対するチベット蜂起の失敗から逃れた1959年以来、この地で暮らしている。

「ダライ・ラマの制度が今後も続くことを確認する」。事前に録画された動画の中で、ダライ・ラマはそう述べた。チベット人やチベット仏教徒からは何年にもわたって、そうした確認を行うよう要請があったという。

その上で、未来のダライ・ラマを探し、承認する手続きはダライ・ラマ法王庁が「過去の伝統に従って」をこれを行うべきであり、他のいかなる者もこの問題に干渉する権限を持たないと強調した。

ダライ・ラマは以前から、90歳を迎えたらチベット仏教の高位ラマ僧及びチベットの人々と協議し、ダライ・ラマの制度を継続すべきかどうか再検討すると表明していた。

2日の発表は、90歳の誕生日を6日に控える中で行われた。後継者の問題を巡っては、亡命中のチベット人指導者たちと無神論を掲げる中国共産党との間で今後、一触即発の戦いが繰り広げられることになるとみられる。中共は次期ダライ・ラマを承認する権限は自分たちだけにあると主張している。

ダライ・ラマは3月に発表した回顧録の中で、後継者は中国国外の「自由世界」で生まれると述べ、同国政府が選んだ候補者を拒否するよう信徒に促している。

その結果、前任者に選ばれたダライ・ラマと中国共産党が選んだダライ・ラマという2人のライバルが出現する可能性があると専門家は指摘する。

豪メルボルンにあるラ・トローブ大学のチベット史の専門家、ルース・ギャンブル氏は、「チベット亡命コミュニティーと中国政府はともに、チベットの将来に影響を及ぼしたいと考えており、次期ダライ・ラマをそのための鍵だと考えている」と語った。

70年代以降、ダライ・ラマはもはやチベットの完全な独立は目指さず、チベット人が独自の文化、宗教、アイデンティティーを維持できるような「意味のある」自治を求めていると主張してきた。非暴力的な「中道」アプローチを貫くダライ・ラマは国際的な支持を得て、89年にはノーベル平和賞を受賞した。

一方でダライ・ラマは、チベット仏教の「輪廻(りんね)転生」に干渉しようとする中国政府の試みを長い間警戒してきた。

チベット仏教徒は輪廻転生を信じており、ダライ・ラマのような悟りを開いた精神的指導者が死ぬと、慈悲と祈りの力によって生まれ変わる場所と時間を選ぶことができると考えている。

中国政府は繰り返し、すべての生き仏(チベット仏教では高位のラマ僧)の生まれ変わりは中国の法律と規則に従わなければならないと主張。生まれ変わりの捜索と身元確認は中国で行われ、中国政府の承認を得なければならないと述べてきた。

これに対しダライ・ラマは、中国政府によって任命された後継候補について、チベット人やチベット仏教徒の目からは正統とはみなされないと明言している。

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