ガザに計画の「人道都市」、実際は「強制収容所」に イスラエル元首相が警告
エルサレム(CNN) 数十万人のパレスチナ人を収容する目的でパレスチナ自治区ガザ地区内に計画されている「人道都市」は、実際には「強制収容所」になると、イスラエルのエフード・オルメルト元首相が警告した。
イスラエルのカッツ国防相は先週、最終的にはガザの全人口を収容することになるこの区域の計画を進めるよう軍に指示したと述べた。その区域は、ガザ南部ラファの廃虚の上に建設され、パレスチナ人が一旦(いったん)その区域に入ると、出ることは許されない。カッツ氏はまた、パレスチナ人をガザから移住させる計画の実行も約束した。
オルメルト氏は13日付の英紙ガーディアンの取材に答え「(実際は)強制収容所だ。残念ながら」「もし彼ら(パレスチナ人)が新しい『人道都市』に強制的に送られるのなら、これは民族浄化の一環だと言って差し支えない」と述べた。
オルメルト氏の発言に対して、イスラエル首相府は同氏を「CNNでイスラエルの名誉を傷つけた確信犯 」と呼んだ。また声明で「我々は市民を避難させる。(イスラム組織)ハマスがそれを阻止する。彼はそれを戦争犯罪だと言うのか?」と疑問を呈した。オルメルト氏は汚職の罪で16カ月服役した後、2017年に釈放された。
オルメルト氏はこれまでにも、ガザにおけるイスラエル軍の行動や、同国の政治指導者を糾弾してきた。5月には、もはや戦争犯罪の非難からイスラエルを擁護することはできないと主張。CNNのインタビューに対し「これが戦争犯罪でなくて何なのか」と訴えていた。
パレスチナ保健省によれば、ガザでは紛争開始以来5万8000人以上が死亡している。
オルメルト氏は06年から09年までイスラエルの首相を務めた。同氏の最新のコメントは、ガザにおけるイスラエルの意図を批判する上でより踏み込んだ内容となっている。とりわけイスラエルでは、ナチスの強制収容所を引き合いに出すことは事実上あり得ないと考えられているからだ。それでもオルメルト氏は、それが当該の計画に対する「必然的な解釈」だと語った。
「彼らが収容施設を建設し、そこでガザの半分以上を『浄化』する(計画を立てる)場合、その戦略は(パレスチナ人の)救済ではないと解釈せざるを得ない。彼らを追放し、押しやり、放り出すことが目的だ」(オルメルト氏)
イスラエルの野党を率いるヤイル・ラピド氏は計画を非難。ネタニヤフ首相が極右政権の連立相手に対し「連立維持のためだけに極端な妄想を暴走させようとしている」とした。またソーシャルメディア上の声明で、紛争の終結と人質の奪還を呼びかけた。
イスラエルの人権弁護士マイケル・スファード氏は先週CNNの取材に答え、カッツ氏の計画はガザ地区からの追放を見据えた住民の強制移送に等しいと指摘。どちらも戦争犯罪に当たるとの認識を示した。
「もしそれが大規模に、つまり共同体全体に対して行われるのであれば、人道に対する罪となり得る」と同氏は付け加え、ガザからの退去を自発的なものとみなす考えを否定した。