地中貫通弾「バンカーバスター」にも耐えうるイラン・フォルドゥ核施設、衛星画像が示す全容
核合意とイスラエルの非難
フォルドゥがもたらす危険性は、通称「イラン核合意」によっておおむね抑えられてきたが、18年に当時のトランプ米大統領が合意から離脱したことで、徐々に後退していった。
イスラエルのネタニヤフ首相は18年、施設に関するさらなる詳細を公表。同国の諜報機関が、イランの「核文書庫」と称する場所から5万5000点あまりの文書を押収した後のことだ。
文書にはフォルドゥの詳細な設計図と、その目的に関する情報が含まれていた。目的は、イランの核兵器計画の一環として、少なくとも年間1~2発の核兵器を製造するための兵器級ウランを製造することだった。
文書を精査したオルブライト氏は、文書が数十万ページにも及んでいることから、これほどの量をねつ造することは不可能だとしたうえで、イランが核兵器開発を推し進めていることに何らの矛盾もないと指摘。IAEA理事会によるイランに対する決議はこれが背景にあると述べた。
最大級の爆弾にも耐える
IAEAの5月31日の報告書は、イランがフォルドゥの施設でウランの濃縮を60%にまで増強したと示唆している。同施設には現在2700台の遠心分離機が設置されているという。
「緊張が高まった要因の一つは、イランにはそれを兵器級ウランに変換するという次の段階に進む以外に、これ(ウランの濃縮)をする理由がなかったことだ」とオルブライト氏は述べた。「イランはもし実行しようと決めたらできるように準備を進めていると解釈された。60%であれば非常に迅速に兵器級ウランに変換できる」
ISISによると、フォルドゥの燃料濃縮施設にある60%濃縮ウランは3週間で233キロの兵器級ウランに変換できる。これは核兵器9発分に相当する。
だからこそ、フォルドゥはイスラエルがイランの核開発計画を弱体化させ破壊しようとする試みにおいて重要な焦点となっている。しかし、それは実現可能だろうか。
フォルドゥの核施設を攻撃するために必要な爆弾を保有しているのは米国だけだと、ライター駐米イスラエル大使は16日、米メリットテレビのインタビューで述べた。
英シンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)が3月に発表した報告書によると、イスラエルがフォルドゥを空から破壊することはほぼ不可能で、相当な火力と米国からの支援が必要になる。
フォルドゥは、到達深度約60メートルの米国製大型貫通爆弾GBU57でさえ到達できない。GBU57は米空軍のステルス爆撃機B2でしか投下できないが、イスラエルはB2を保有していない。
さらに報告書は、「GBU57/Bでさえ、施設を貫通する確率を高めるには、同じ照準点に複数回着弾させることが必要になる可能性が高い」と述べている。
一方でオルブライト氏は、フォルドゥを無力化する方法は他にもあるかもしれないと話す。「イスラエルはトンネルの入り口をかなり深くまで破壊できるだろうし、換気システムも確実に破壊できるだろう」「(トンネルと)電力供給を破壊すれば、実稼働できるようになるまで数カ月はかかる」
イランの核開発計画においてフォルドゥは極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、オルブライト氏はフォルドゥがパズルの1ピースに過ぎないとの考えを示す。
「フォルドゥを破壊しても、それで終わりではない。次の脅威が待ち受けているからだ。イランはフォルドゥとナタンズに配備していない遠心分離機をどれだけ製造したのか。そして、それらはどこにあるのだろうか?」