(CNN) イランとイスラエルとの間の決定的な紛争の結末は、せいぜい大まかな推定値に過ぎないものの、たった一つの単純な数字によって左右される可能性がある。
イスラエル軍のデータと専門家の分析によれば、イランは過去1年2カ月の間、イスラエルに対して約700発の準中距離弾道ミサイル(MRBM)を発射しており、備蓄されている数量は300~1300発だという。
この残りの兵器庫はイスラエルによる過去5日間の激しい空襲にさらされている。イスラエル軍はMRBMを発射する地対地ミサイル発射装置の少なくとも3分の1を標的にしたと明らかにしており、イランのイスラエルへの反撃能力がさらに低下する可能性がある。
専門家によれば、イスラエルの空軍力がほぼ無敵の状態にあり、イランによるイスラエル各都市への夜間の攻撃が最近弱まっていることから、イランは兵器の枯渇を受けて軍事衝突からの脱却を交渉によって実現したいという願望を強め、今後数日間はイスラエルの攻撃が激しさを増す可能性がある。
イランのミサイルの備蓄量に関する信頼できる推計はほとんど存在していない。米中央軍のケネス・マッケンジー司令官は2023年、イランは射程の異なるミサイルを3000発以上保有していると発言していた。米シンクタンク「民主主義防衛財団」の上級研究員ベナム・ベン・タレブル氏は、これらのミサイルのうち1000~2000発は中距離ミサイルで、イランとイスラエルの間の1400キロは射程圏内である可能性が高いとしたが、この推計は「せいぜい大まかな計算」だと言い添えた。
イスラエル軍によれば、イランは昨年4月13日に行ったイスラエルに対する攻撃で120発のMRBMを使用し、同10月1日には200発を発射した。さらに、過去5日間では計380発のMRBMを使用しているという。
これにより、イランの既存の兵器数は計700発減少することになる。しかし、これがイランのミサイル抑止力の存亡に関わる危機となるかどうかは、当初の備蓄量と、イスラエルが今月13日にイラン全土への攻撃を開始して以降、イランの軍事インフラにどのような損害を与えたかによって決まる。
ベン・タレブル氏は、イランのMRBMの保有数は1300発の可能性があると指摘した。べつの推計はもっと悲観的だ。イスラエル海軍の元情報将校で、現在はベギン・サダト戦略研究所の上級研究員であるエヤル・ピンコ博士は「過去4日間でイスラエルが400発から500発を発射し、保有していた兵器の一部をイスラエルが破壊したことを考慮すると、現在の保有数は800発から700発だと思う」と述べた。

イラン首都テヘランの広場に展示された中距離弾道ミサイル「セジル」=2023年9月/Morteza Nikoubazl/NurPhoto/Getty Images/File
昨年10月26日にイスラエルが実施した攻撃によってイランの防空システムとミサイル生産に対して与えられた損害がわずかに垣間見えたが、その被害は甚大だった。英国のトニー・ラダキン国防参謀総長は昨年12月、イスラエル軍機100機が数キロ離れた地点からミサイルを発射して「イランの防空システムのほぼすべてを破壊した。これにより、イランの弾道ミサイル製造能力は1年間にわたり破壊された」と語った。
しかし、最近、イスラエルは、イランのミサイル製造がもたらす脅威を増幅させている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルが空爆を開始した13日、イランが弾道ミサイルの製造を月300発に拡大させており、6年後には2万発に達する可能性があると語った。ネタニヤフ氏はこの主張の根拠を示さなかった。
ピンコ氏は昨年の攻撃によって、イラン国内の「弾道ミサイルのエンジン製造の主要施設が破壊され」国内のサプライチェーン(供給網)に深刻な制約が生じたと指摘した。しかし今後数カ月以内に中国から支援が得られれば、生産が再び増加する可能性もあるという。
ベン・タレブル氏は、イランはMRBMの保有数が「4桁を下回る」ことを望んでいないだろうと述べた。
「イランにとって量には質が伴う」とベン・タレブル氏。イランは「危機管理には優れているものの、実は通常の戦闘能力が乏しい。そして、これらの弾道ミサイルを危機の時ではなく戦時に使わなければならないことで、まさにこのような窮地に陥る」。
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本稿はCNNのニック・ペイトン・ウォルシュ記者とジョー・シェリー記者による分析記事です。