ANALYSIS

【分析】イスラエルの攻撃望まなかったトランプ氏、それでも攻撃したイスラエル

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トランプ氏の再三の牽制にもかかわらず、イスラエルはイランへの攻撃に踏み切った/Chip Somodevilla/Getty Images

トランプ氏の再三の牽制にもかかわらず、イスラエルはイランへの攻撃に踏み切った/Chip Somodevilla/Getty Images

(CNN) イスラエルの軍用機がイランへの攻撃を実施した13日未明から数時間前、中東における全面戦争への懸念を改めて強調しながら、米国のトランプ大統領はそのような結果を回避したいと明言していた。

「彼らには踏み込んで欲しくない。というのも、それで事態が台無しになってしまうからだ」。トランプ氏はそう語った。念頭にあったのはイランの核兵器の野心を抑制するための外交努力だ。

イスラエルがそれでも攻撃に踏み切ったという事実、つまり米国の一切の関与なしに、そして米大統領が公に表明した願いに反して攻撃を実施したという事実により、今やトランプ氏は追い込まれている。2期目の就任から間もない同氏は、ここへ来て最大級の試練に直面する。

本人が語るように、今回の攻撃でイラン政府に対する自身の外交努力は水の泡になりかねない。政権の高官が今週末の新たな協議のため、オマーンに向かう準備を整えていようともその状況は変わらない。

それはただでさえ緊迫したイスラエルのネタニヤフ首相との関係にも影を落とす。トランプ氏はネタニヤフ氏と数カ月にわたり意見が真っ向から対立。今週も攻撃を控えるよう、強く呼び掛けたばかりだった。

トランプ氏の前に現れた新たな世界規模の紛争は、簡単に解決できそうもない。今回は数万人の米兵が、当該地域の戦火に巻き込まれる可能性もある。

今のトランプ氏は、自らの党内で起きた意見対立によって板挟みになった気分だろう。多くの共和党議員は12日、即座にイスラエルへの支持を表明した。長年イランに対するタカ派として知られるリンジー・グラム上院議員は、X(旧ツイッター)に「ゲーム開始」と書き込んだ。

それでもトランプ氏はこれまでのところ、自らが所属する党の強硬な外交政策を取り入れたことはない。2期目に関しては特にそうで、同氏の政権を固める当局者たちはバンス副大統領を筆頭に、海外への米軍の関与に対して非常に懐疑的な見方を示す。米軍が関わるのであれば、米国にとっての明白な利益が見込めることが条件になる。

攻撃直後の段階で、トランプ氏は米軍のアセットを使ってイスラエルの防衛を支援する用意があるとのメッセージを一切発していない。イスラエルに対しては今後イランからの報復が予想される。バイデン前大統領は、昨年イスラエルとイランが戦火を交えた際に、イスラエル防衛への支援を示唆していた。

米国の支援がなければ、イスラエルの防空システムはイランの大規模な攻撃に耐えられない可能性がある。

米政権による公式メッセージの焦点は、中東にいる米国人職員の保護の方だった。同時にイランに対しては、米国を緊張状態に引き込まないよう警告を発した。

ただトランプ氏があらゆる複雑な政治的原動力のより分けを行う中にあって、今回の攻撃に対する驚きは同氏自身にも、政権内にもほとんどなかった。

12日、ホワイトハウスのイーストルームで記者団の質問を受けるトランプ氏/Win McNamee/Getty Images
12日、ホワイトハウスのイーストルームで記者団の質問を受けるトランプ氏/Win McNamee/Getty Images

12日にホワイトハウスのイーストルームから発言した時点でさえも、トランプ氏と側近らは攻撃が近く行われる可能性があることを認識していたと、複数の情報筋が明らかにしている。トランプ氏本人は再三ネタニヤフ氏に自制を求めようとしていたが、それでも攻撃の実施は想定していたわけだ。

攻撃が行われている間、トランプ氏はホワイトハウスのサウスローン(南庭)でのイベントに出席。その後西棟に戻り、高官らと打ち合わせをした。ホワイトハウスの当局者やその他の情報筋が明らかにした。

その後でルビオ国務長官が出した簡潔な声明は、米国と、攻撃におけるあらゆる役割との間に距離を置こうとする内容だった。

「今夜、イスラエルはイランに対する単独での行動に踏み切った。我々は対イラン攻撃に関与していない。我々の最優先事項は地域に派遣されている米軍を守ることだ」。ホワイトハウスが配布した声明は、そう述べている。

「イスラエルからは、自衛のためにはこうした行動が不可欠だと聞かされていた。トランプ大統領と政権は、必要なあらゆる策を講じて我が軍を保護し、地域の提携国との緊密な連絡を保っている」と、ルビオ氏は続けた。「はっきりさせておこう。イランは米国の国益や人員を標的にするべきではない」(同氏)

型通りの言い回しによってさえ、声明はイスラエルとその防衛への支援には言及しなかった。その意味するところは明白だ。これはあくまでもイスラエルの紛争であり、トランプ氏の紛争ではないということだ。

本稿はCNNのケビン・リプタック記者による分析記事です。

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