プロテインシェイクに毒物を混入され夫に殺害された妻、不可解な症状に苦しめられた10日間 米
「体の中は震えているのに、外側は震えていない」
数日間の入院中にも容体は悪化し、蘇生処置が施されるほどだった。ジェームズ被告は不倫関係にあった女性にそう語ったという。
兄のマーク・プレイさんと妻のレニーさんが病院に駆け付けると、クレイグさんはジェームズ被告が見せかけていたよりも、実際には元気そうに見えた。プレイさんはそう証言した。妹は話すことができていたし、心も前向きで、「状況を考えると、かなり普通に振る舞っていた」。
6日間の入院を経て、3月14日に退院したが、このときもまた原因は不明だった。
クレイグさんは自力で歩くことができていたが、病院から14キロほど車で移動したため、かなり疲れていたようだった。それでも、帰宅してから1時間も立たないうちに症状の原因をインターネットで調べ始めたという。
クレイグさんは兄に「体の中は震えているのに、外側は震えていない」と話した。
その晩、クレイグ家のキッチンの防犯カメラの映像には、ジェームズ被告が妻のためにプロテインシェイクを作っている様子が映っていた。しかしレニーさんは、誰が作ったのか、義理の妹がその日に口にしたかどうかも覚えていないと証言している。
副鼻腔炎の抗生物質
翌朝、ジェームズ被告はレニーさんにテキストメッセージで、抗生物質を妻に与えるよう依頼した。検察によれば、クレイグさんは副鼻腔炎のためにこの抗生物質を服用していたという。
クレイグさんが午前10時にこの薬を服用したところ、「20~25分後には、立ち上がることさえできなくなり」、ベッドに倒れ込んだ。
プレイさんはクレイグさんを車で病院へ運んだ。
病院へ向かう途中、めまいと激しい頭痛に襲われたクレイグさんは、自分に何が起こっているのか理解できていなかった。プレイさんは「トリアージ中、話しかけていなければ意識を失っていただろう」と振り返った。
検察官によると、兄妹のあとに病院に現われたジェームズ被告は、抗生物質のカプセルの中身を致死性の高いシアン化カリウムに入れ替えた疑いがもたれている。
血液検体から高濃度のヒ素やシアン化物
クレイグさんの容体はその後3時間にわたって悪化の一途をたどった。そして発作を起こし、容体は急速に悪化。ICUで生命維持装置が装着された。
警察の証言によると、クレイグさんは3月15日に脳の活動が停止し、18日に脳死と診断された。
死後、病院への通院中に採取された複数の血液サンプルが検査された。
法医毒物学者は、3月9日時点のクレイグさんの血液に、腹痛、吐き気、下痢、めまいなどの消化器症状を引き起こす可能性のある、高濃度のヒ素が含まれていたと証言した。
3日後の検体からは再び高濃度のヒ素が検出されたほか、シアン化物、テトラヒドロゾリンも見つかった。ヒ素の量は以前より減っていたものの、再びヒ素に曝露した可能性が高いことが示された。
法医毒物学者は、血液検査の結果から「病院内でシアン化物の2度目の投与が行われたことは間違いない」と証言した。この化学物質はヒ素と同様の症状を引き起こし、最終的に臓器不全につながる可能性がある。