ANALYSIS

初代駐ウクライナ米国大使、「我々は最初から対処を間違えていた」

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テキサスA&M大学のジョージ・ブッシュ大統領図書館でのフォーラムに参加するローマン・ポパデュク氏=2008年2月29日/Paul Zoeller/AP

テキサスA&M大学のジョージ・ブッシュ大統領図書館でのフォーラムに参加するローマン・ポパデュク氏=2008年2月29日/Paul Zoeller/AP

(CNN) 初代ウクライナ大統領は、アメリカの第41代大統領との会談を待つ間、1人のホワイトハウス報道補佐官と談笑していた――ウクライナ語のままでだ。ジョージ・H・W・ブッシュ政権の国務副長官はそれ以上話を聞く必要がなかった。

「君を派遣すべき先はわかっている」。イーグルバーガー副長官はこの報道補佐官、ローマン・ポパデュク氏にそう伝えた。

オーストリアでウクライナ難民の両親のもとに生まれ、その後アメリカに移住したポパデュク氏は、こうして初代駐ウクライナ米国大使に就任した。ソビエト連邦が崩壊した後の1992年のことだった。ロシアの侵略から国を守るウクライナの支援に各国が協調する現在に先駆けること30年、同氏は両国外交のスタート地点に立っていた。

そして今、同氏はこの期間の米政府の対応について「我々は始めから対処の仕方を間違えていたようだ」と厳しい判断を下している。

これは政治的発言ではない。ポパデュク氏はこれまで政治任命官ではなく、職業外交官としてキャリアを積み重ねてきた。同氏の人生はまさにアメリカンストーリーの典型だ。

同氏の家族はカトリック系慈善団体の援助を受けながら、一時アイオワ州の農場で過ごした後、最終的にニューヨーク市ブルックリン区に行きついた。1959年、ポパデュク氏が9歳の時、移民局の職員から第2の故郷の市民権証明書を渡された。ちょうど感謝祭の直前だった。

「職員は『七面鳥は好きかい?』と言った」と、ポパデュク氏は笑いながら当時を振り返る。「『君はもうアメリカ人だ』とね」

国際関係学で博士号を取得し、外交官試験に合格した後、同氏は最終的にレーガン政権下で政治色の薄い職務に就いた。当時ホワイトハウス報道官だったラリー・スピークス氏により国際担当副報道官に起用され、次期政権でもこの職を引き継いだ。その後ブッシュ政権でキーウ(キエフ)に送り込まれた。

89年のベルリンの壁崩壊後は、米国は外交面でロシアに注力し、冷戦時代の敵国から経済の近代化と安全保障協力を引き出そうとした。ウクライナをはじめとする旧ソ連共和国はほとんど注目されていなかったとポパデュク氏は言う。

大使に就任した同氏は、のちにブダペスト覚書と呼ばれる協定の話し合いを主導した。この覚書にもとづき、ウクライナは米ロ英から安全保障の確約を得るのと引き換えに、国内に残る大規模な核兵器の備蓄を手放した。

ウクライナ側の譲歩は見た目ほど大きなものではなかった。手放した核兵器の発射コードを保有していたのはロシアだったからだ。だがポパデュク氏は、発足したばかりのウクライナ政府はアメリカからもっと多くの経済的・軍事的支援を確保すべきだったと語る。

良好な米ロ関係を維持したいという動機が主な理由で、その後も過ちが続いた。ロシアのプーチン大統領の「魂に触れた」という発言で有名なジョージ・W・ブッシュ大統領は、ロシアが2008年にジョージアに侵攻した際に慎重な姿勢を示した。米ロ関係の「リセット」を望んでいたオバマ大統領も、ロシアがウクライナからクリミアを占領した際に同様の対応をした。

「両政権ともその脅威に気づくには至らなかった」とポパデュク氏は結論づける。

トランプ大統領は国内の分断を悪化させたが、プーチン氏はそれを利用し自国の侵略行為に対するアメリカの反応を弱めようとした。その中にはトランプ氏自身の弾劾(だんがい)訴追も含まれる。トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領に自身の政治的便宜のため圧力をかけようとした。

だがポパデュク氏は、トランプ政権がプーチン氏の打算に根本的な影響を与えたとは考えていない。ウクライナも入れた東欧諸国を含む北大西洋条約機構(NATO)拡大を支持したクリントン大統領も非難していない。

こうした出来事よりも、ロシアが長年ウクライナ支配を望んでいたことのほうが根深いと同氏は説明する。同氏がバイデン現大統領の責任を問うのもそうした理由からだ。バイデン氏は戦争前からプーチン氏の意図について正確な情報を公表していたが、機先を制してもっと多くの軍事支援を行わなかったとポパデュク氏は批判する。

「ロシアがウクライナを攻撃すると知っていたなら、なぜ事前にあらゆる必要なものを供与しなかったのか」とポパデュク氏。「我々は先手を打つべきだった」

ウクライナ兵の勇敢さとロシア兵のふがいなさに、プーチン氏は不意を突かれたようだ。バイデン氏と欧米各国首脳の連帯保持も意外だっただろう。

だがポパデュク氏は、核戦争へのエスカレートを懸念するあまり、NATO同盟国は身動きが取れなくなっていると語る。例えばNATOはいまだに旧ソ連戦闘機をウクライナに供与していないが、これは武器を供与する場面でロシアから攻撃を受け、NATOが対応せざるを得ない状況になる可能性を避ける意図がある。

「我々はゲームのルールをプーチン氏に決めさせてしまっている」とポパデュク氏は語る。そして、破滅的な交戦のリスクをロシアの指導者の側に背負わせることをしていないと指摘する。

ロシア軍が目標を達成できずにいる中、ウクライナの民間人に対する攻撃はますます凄惨(せいさん)の度合いを強めている。病院を標的とした攻撃やブチャ市内の処刑に加え、先週はクラマトルシクの駅がミサイル攻撃に遭った。

こうしたことが起これば起こるほど、飛行禁止区域設置などの措置によるロシアとの直接対決を避けようとする同盟国の抵抗は、ますます厳しい試練を迎えている。

「越えてはならない一線を西側諸国は設定しなくてはならない」とポパデュク氏。目指すべきは、プーチン氏の頭にある費用便益分析を変えるのに十分な高い代償を設定することだ。

悲惨な結果になることはすでに確定している。考えるだけでも後味が悪いが、最終的に停戦の条件は、クリミアとウクライナ東部の一部におけるロシアの支配を承認することになると同氏は懸念している。

現在71歳のポパデュク氏は長いこと外交の舞台から退いている。ブッシュ大統領図書館と同様にテキサスA&M大学構内にあるジョージ・H・W・ブッシュ財団の外交専門家の仕事から退職し、もう10年以上になる。

ポパデュク氏が確信をもって言えることは、欧米同盟国がどんな対応に出ようとも、ウクライナ人は国を守り続けるということだ。

「ウクライナにとって、これは生き残りをかけた文化戦争だ」と同氏は言う。「戦う者がいるかぎり、戦闘は続くだろう」

本稿はCNNのジョン・ハーウッド記者の分析記事です。

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