ANALYSIS

ロシアとウクライナの交渉、停戦への道筋示すも行く手には地雷原

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ロシアとウクライナの和平に向けた道筋は、今後多くの課題に直面することが予想される/Ukraine President's Office

ロシアとウクライナの和平に向けた道筋は、今後多くの課題に直面することが予想される/Ukraine President's Office

(CNN) 19日前にウクライナとロシアの外相がトルコで会談した時、雰囲気は険悪だった――双方とも互いの立場をほとんど譲らなかった。

29日、イスタンブールで行われたロシアとウクライナの代表団による会合では政治的ムードはかなり改善され、おぞましい壊滅的戦争の全面的解決の輪郭が、おぼろげながらも見え始めた。

会合では、クリミアおよびドンバス地方の今後の在り方やウクライナの中立的立場、安全保障の確約による保護、現在キエフ北部で展開しているロシア軍の大幅な撤退の他、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談の可能性についても話し合われた。

ウクライナ側はロシアが2014年に併合したクリミアの地位について、今後の課題とすることに合意した。

クリミア併合に関してはウクライナも欧米諸国もこれまで承認していなかったが、ポドリャク大統領府顧問は今後の展望として、「この領域の地位に関しては、15年間かけて二国間協議で話し合うことに双方が同意した」と述べた。

「これとは別に、二国間協議が行われる15年間は軍事的敵対行為を行わないことについても話し合った」とも報道陣に語った。

これにより、もっとも対立を深める争点のひとつが、とりあえず棚上げされる形となる。

双方とも建設的な態度だったようだ。ロシア側の交渉団は「戦争を終わらせる方策を示した協定案を受理し、自分たちの提案を検討するだろう」とポドリャク顧問は述べた。

ロシアの通信社タス通信はロシア交渉団トップのウラジーミル・メジンスキー氏の発言として、交渉が建設的だったと報じた。また同氏は「ロシアは事態の鎮静化に向け、ウクライナ側に2歩歩み寄った」と述べた。

歩み寄りの中でも直近のものとして、チェルニヒウと首都キエフに対する攻撃を大幅に縮小するとロシアが宣言したことが挙げられる。北部ウクライナのチェルニヒウはこの3週間ロシア軍に包囲され、甚大な被害を被っていた。

とくに重大なのは、ウクライナ側の提案が十分に調整されており、「大統領に提示することができる。我々も今後適切な返答を提示する」とメジンスキー氏が発言したことだ。

「合意交渉が迅速に行われ、妥協が見出せるのであれば、和平合意の可能性もより近づくだろう」と同氏は述べた――2月末の最初の交渉以来、ロシア当局者の考えとしてはもっとも前向きな発言だ。

これまでロシア当局者は、大統領本人が直接協議の場につく前にさらなる交渉が必要だとして、プーチン大統領の交渉参加を一切退けていた。

だが今やロシア国営通信社のRIAノーボスチは――ロシア代表団の発言として――両国外相による和平協議と並行し、プーチン大統領とゼレンスキー大統領による首脳会談もありうると報じた。

交渉の仲介にあたったトルコのチャブシュオール外相は「一刻も早い停戦実現に向けた最優先事項は、恒久的な政治的解決への道筋を築くことだ」とし、想定されるシナリオについて語った。

「厄介な」問題に関してはロシア、ウクライナの外相レベルに持ちこされ、「共通のアプローチに向けて最終調整が行われる」との見通しだ。またプーチン大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談も今後議題に上るだろう、と会合後に記者団に語った。

浮かび上がる輪郭

ウクライナにとって、安全保障の確約はつねに紛争解決の要だった。だが次第にゼレンスキー大統領も政府当局者も歩み寄りの姿勢を見せ、憲法で謳(うた)われている北大西洋条約機構(NATO)加盟はウクライナの権利――むしろ義務――であるというこれまでの主張を譲歩している。

そこへきて今、非常に異なる提案が持ち上がっている。

会合の後、ウクライナ交渉団の1人ダビッド・アラカミア氏はウクライナのTVに対し、「我々は全ての保証国が署名する国際協定を策定し、批准することを強く主張する」と発言した。

ウクライナ当局者によれば、この協定は保証当事国の議会で批准されなくてはならない。これらの当局者らが可能な限り保証された仕組みを確立しようとしているのは明らかだ。またウクライナは、保証国にロシアも含む国連安全保障理事会の常任理事国を加えたい考えだ。

安全保障の確約は非常に具体的なものになるだろう、とアラカミア氏は述べた。ウクライナに対して侵攻や軍事作戦が行われた場合には「3日以内に協議を行わなければならない」

「その後、保証国には我々の支援が義務付けられる。軍事支援、兵力、武器、飛行禁止区域――我々が今非常に必要としながらも、手に入れることができずにいるもの全てだ」

ウクライナが現在目指しているものは、保護下での――かつ恒久的な――中立性と言えるだろう。

別の交渉団のメンバー、オレクサンドル・チャリー氏は次のように語った。「ウクライナの安全保障再建に向けて、あらゆる手段を講じることが主要条件だ。我々にとって根幹的要件であるこれら主要事項を確立できるなら、ウクライナは事実上、永世中立という形で非同盟国、非核国としての地位を固める立場を取るだろう」

さらにチャリー氏はこうも続けた。「(我々は)領地内に他国の軍事基地や他国の軍隊を配備しない。軍事的、政治的同盟は締結しない。国内での軍事演習は、保証国の同意のもとでのみ行う」

プーチン大統領がこれまでずっと要求の中核に据えてきたのもこの点で、本人が言うところの「特別軍事作戦」の開始宣言前に行った長大な演説でも表明していた。

NATOの代わりにEU加盟

ウクライナはNATO加盟という野望を断念する代わりに、EUへの早期加盟を目指すことがさらに明確になった――これに関しても、ウクライナは保証国の後押しを望んでいる。

ウクライナ国民の間でも広く支持されているEU加盟の可能性が見えてくれば、ウクライナ政府が公約に掲げてきた安全保障を伴う中立性も、国民投票で全面的に承認されることになるだろう。

もちろん一筋縄ではいかない。原則は定められたものの、詳細や具体的な流れ、文言をめぐる交渉はいばらの道ならぬ地雷の道となるだろう。ポドリャク顧問も「間違いなく、安全保障に関する協定が締結されるのは停戦が実現し、ロシア軍が2022年2月23日の状態に完全撤退した後になるだろう」と述べた。

ロシア側はキエフ北部での軍事行動の縮小には応じたものの、東部や北東部、南部では今も激しい戦闘が続いている。

メジンスキー氏も交渉会場を後にする直前に、キエフおよびチェルニヒウ方面での「段階的鎮静化」は「停戦を意味するものではない」と警告した。だが「キエフ側も決断しなければならないだろう。我々はこの街をさらなる危険にさらすことは望まない」とも述べた。時計の針は刻々と進んでいる。

交渉が停滞、あるいは決裂すれば、キエフ北部から再配備されたロシア軍が東部や南部への侵攻を強化する可能性もある。

確かに、ついこの週末にも、プーチン大統領が北朝鮮と韓国のようにウクライナの分割を図っている、とウクライナ軍諜報(ちょうほう)指導者が警告したばかりだ。

「プーチン氏がウクライナで『朝鮮半島』のシナリオを想定していると信じるに足る理由はある。つまり(ロシア軍は)境界線を引き、我が国を占領地域と非占領地域に分断しようとするだろう。事実上、ウウライナを南北朝鮮化する試みだ」と、ブダノフ情報総局長は27日に発言した。

まだまだ交渉が続くだけでなく、全面的な停戦の見通しも立たない。ウクライナ側もロシア側の意図を完全には信用していない。再三口を酸っぱくして言っているように、結局のところ今後の展開はただ1人、プーチン大統領の手に委ねられている。

本稿はCNNのティム・リスター記者の分析記事です。

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