トランプ大統領の行動、全国民が懸念すべき

選挙結果を覆そうと試みるトランプ氏。選挙に不正があったと考える同氏の支持者は多い/Mandel Ngan/AFP/Getty Images

選挙結果を覆そうと試みるトランプ氏。選挙に不正があったと考える同氏の支持者は多い/Mandel Ngan/AFP/Getty Images

(CNN) 米大統領選から数週間、トランプ大統領とそのチームによる最終結果を覆す試みは、複数の裁判所で失敗に終わっている。しかし世論という法廷において、彼らは驚くほどの進展を遂げた。こうした動きはバイデン次期大統領の統治能力のみならず、我が国の民主主義そのものさえも脅かしかねない。

デービッド・ガーゲン氏
デービッド・ガーゲン氏
キャロライン・コーエン氏/ Caroline Cohen
キャロライン・コーエン氏/ Caroline Cohen

当初、トランプ氏は訴訟の連発によって選挙結果をひっくり返せると確信していた。さもありなん。同氏にとって訴訟は望むところであり、闘争の一形態に他ならない。その生涯を通じ、トランプ氏がかかわってきた訴訟の数は4000件に上る。ただ今回のケースでは、情勢を大きく見誤った。1件の小さな訴えでの勝利を除きトランプ氏は満足いく結果をあげておらず、敗訴もしくは取り下げた訴訟の数はここまで25件を超えている。

トランプ氏に多少なりとも品格というものが備わっていれば、とうの昔に敗北を認め、後継者にバトンを手渡し、協力を申し出ていただろう。それが200年以上にわたる大統領選での伝統だ。しかし、おそらく現在の同氏は時間を稼ぎつつ、第2ラウンドの展開を見守っているのではないか。

率直に言って、状況はトランプ氏により有利に傾きつつあるようだ。18日公表のモンマス大学の世論調査では、米国民の32%がバイデン氏の勝利を不正投票の結果と考えていることが分かった。トランプ氏支持者に絞れば、77%が同じ意見を共有している。

こうした分の悪いデータは、ロイター通信の報道によってさらに裏付けられる。トランプ氏に投票した全米の50人に同社がインタビューしたところ、「全員が選挙結果について、不正に操作された、もしくはある意味で違法だと確信していると回答した。(中略)多くの回答者が、虚偽とされる陰謀説を繰り返し口にした。(後略)」。特筆すべきは、回答者の中から保守系のFOXニュースの視聴をボイコットし、「ニュースマックス」や「ワン・アメリカ・ニュース」といった新興の右派メディアに乗り換えるという声も上がったことだ。両メディアはトランプ氏の根拠のない不正投票の主張を支持している。

これは我々の国民生活にとって重大事である。ロイター通信の記者が書いたように、選挙結果を拒絶する考えが共和党員の間で広がっている現状は「かつてない危険な動きが米国政治の中で生まれたことを反映している」。

常に忘れてはならないのは、米国民の7900万人超がバイデン氏に投票した一方で、トランプ氏も7300万票以上を獲得したという事実だ。これまでの世論調査の結果に基づき、次のように仮定してみよう。このうちの約4分の3は、バイデン氏が不正といんちきによって大統領になろうとしていると考えている。ざっと計算すると、バイデン氏が大統領就任の宣誓を行うその日になっても、5000万人以上の米国民は同氏を正統な大統領とは認めていないということになる。彼らが結集すれば、向こう数年にわたり強力な政治勢力となるかもしれない。政権の座を争う一方が選挙の合法性に疑問を投げかけた例は過去にもあったが、これほどの信念に根差し、計画的な活動によって誤情報が広まったことはかつてなかった。

さらに厄介なことに、我々には歴史的な先例が不足しており、こういった状況にどう対処すればよいかが判然としない。過去数十年間、フランクリン・ルーズベルトからロナルド・レーガンに至るまで、新たに就任した大統領にはいわゆる「ハネムーン期間」なるものが有権者、野党、マスコミから与えられてきた。こうしたハネムーンが就任1年目の8月の休暇を越えて続くことはまずなかったが、それでも任期の始まりを告げるこの貴重な期間に新大統領は大仕事を行うことができた。フランクリン・ルーズベルトは就任後最初の100日間で76の法案を通し、ニューディール政策を本格的に始動させた。後任のハリー・トルーマンも、同じ時期に55本の法案を成立させている。

より最近の、ビル・クリントン氏からバラク・オバマ氏までの時代になると我が国の政治は二極化の傾向を強め、新大統領にそれまでのような優雅な期間が与えられることはなくなった。ただ、従来よりはるかに厳しい審判を受けながら任期の最初の日々を過ごしたとしても、これらの大統領が国を統治する権利は、就任1日目から正統なものとして認められていたのである。

選挙で敗れた側が新大統領の合法性を否定するなどというのは前代未聞だ。まだ就任さえしないうちから、ここまでの程度や手法で攻撃してくる事例は過去に存在しない。

重要な点として記憶すべきなのは、この状況が偶然生まれたものではないということだ。ますます明らかになりつつあるように、数カ月間にわたってトランプ氏と陣営の代理人らは、組織的な取り組みの中でバイデン氏の大統領就任への望みを打ち砕こうとしてきた。選挙に先駆け、トランプ氏は再三郵便投票の合法性に疑問を呈し、敗れた場合は結果を受け入れない考えを示唆していた。つまるところ、意図的な選挙妨害を行ったのであり、それによって我が国の民主主義がどれほど棄損され得るかといったことはほとんど顧みていなかった。

オバマ前大統領の出生地を疑問視する主張(後に撤回した)から、数千件のうそをツイッターや集会、記者会見で拡散している問題に至るまで、トランプ氏が築いた政治の帝国は、これまでついてきたひとつひとつのうその上に成り立っている。それでも同氏に公の舞台から去る意志はなく、数百万人の支持者の存在から政治的な影響力を得られると見込んでいる。我が国の民主主義の伝統よりもトランプ氏の方を熱烈に信じる支持者たちから。

では、トランプ氏にこれ以上の虚偽の拡散を止めさせることは可能なのだろうか。民主主義を危険にさらす行動に待ったをかけることはできるのか。おそらくできる。しかし我が国の新たな大統領の努力だけでは全く追いつかないだろう。新大統領による事態の回復以上の取り組みが必要だ。トランプ氏の側近に名を連ねる現実主義者たちが信じるところによれば、同氏は司法捜査官と銀行債権者を何よりも恐れる。現在これらの人々は、ホワイトハウスの門の外で同氏を待ち構えている。どうなるか見ものだ。

とはいえ、我々もまた、より重大な責任を負わなくてはならない。バイデン氏のチームはトランプ氏に対し、より厳しい態度で臨む必要がある。いわゆる「おしゃべり階級」に属する我々は、トランプ氏の日頃の悪ふざけを報じるのを止めるべきだ。同氏が執務室を去るのなら、そのままスポットライトから外れてもらえばよい。共和党の指導部の立場からトランプ氏に協力してきた人たちは、いい加減党本来の気概というものを今一度見つめ直し、原点に立ち返る長い道のりを歩み始めなくてはならない。何よりも、国への愛を声高に叫ぶ我々が一歩踏み出し、自ら手を差し出して、考え方やものの見方の異なる人たち、我々の政治のやり方を好まない人たちへ働きかける必要がある。米国は我々みんなのものであり、そこにはトランプ氏に投票した数多くの隣人たちも含まれるのだから。

デービッド・ガーゲン氏は民主・共和両党の4人の大統領の下でホワイトハウスの顧問を務めた。現在はCNNの政治担当シニアアナリストであり、ハーバード大学公共政策大学院(HKS)教授。同校のセンター・フォー・パブリック・リーダーシップの共同創設者でもある。キャロライン・コーエン氏はデービッド・ガーゲン氏のHKSでの研究助手で、ハーバード大学の優等卒業生。卒業論文で同大学部生の優れた研究に贈られるフープス賞を受賞した。記事の内容は両氏個人の見解です。

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