総工費3兆円、ロンドン新高速鉄道「エリザベス線」の内部に迫る

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東西を結ぶ新高速鉄道によって移動の利便性が大きく向上するとみられている/Chris Ratcliffe/Bloomberg/Getty Images

東西を結ぶ新高速鉄道によって移動の利便性が大きく向上するとみられている/Chris Ratcliffe/Bloomberg/Getty Images

すべての乗客のために改善

クロスレールの建設に備え、10億ポンド以上を投じて31の既存駅と線路の施設改善やバリアフリーなどの改良工事が行われた。

またクロスレールは26年以降、パディントン西部で現在建設中のオールド・オーク・コモン駅にも乗り入れる予定だ。その新駅から、29年から40年にかけて段階的に開通予定の次世代高速鉄道計画「ハイスピード2」(時速約354キロメートル)に乗り換えれば、ミッドランド、イングランド北部、スコットランドへの高速移動が可能になるという。

「完璧でなければならない」

クロスレールは、19世紀から続く2つの既存鉄道に新線を継ぎ目なくに統合するという、驚くほど複雑なプロジェクトだ。

新車両は3つの異なる信号システムで安全かつ確実に走行しなければならず、特注のソフトウェアと長い試験期間が必要となった。

無数のシステムを確実に連携させることが、遅延とコスト超過の根源となっている。ロンドン交通局オペレーション部長のハワード・スミス氏は今年初め、「信号システム、通信システム、信号と列車を制御するソフトウェアの接合により、当初の計画よりも時間がかかった」と説明した。

またバイフォード氏も「完璧でなければならない」とコメントしている。「試験走行では、定時運行率が98%の日もあれば、80%の日もあり、これでは十分とは言えない」

課題山積の過去

クロスレールは当初、18年に開通する予定だった。

ロンドン市長のカーン氏は、18年12月に公開された文書で、プロジェクトが5年以上にわたって誤って管理されていたことが明らかになると、「遅延とコスト超過に深い怒りと苛立ちを覚えている」と述べている。

事態は悪化した。クロスレールは18年8月、同年12月の開業を目指してまだ作業中だとしていたが、そのわずか3週間後、開業日を丸1年延期した。19年4月には、少なくともあと1年半の期間が必要だとして、期限はその後22年まで延長された。

会計検査院は、19年5月の報告書で、この遅延を「非現実的な」スケジュールのせいだと非難した。

さらに、パンデミック発生前に立てられたクロスレールの利用者数と収入予測は、向こう何年も達成できる見込みはなく、ロンドン交通局の財政はすでに逼迫(ひっぱく)している。

新しいロンドンの象徴

クロスレールを巡っては賛否両論あるものの、世論は比較的好意的に受け止めているようだ。

鉄道ジャーナリストのクリスチャン・ウォルマー氏は「当初の予算では明らかに非現実的だった」と指摘しながらも、「クロスレールは素晴らしい計画であり、壮大な構想だ。赤いバスや地下鉄、ネルソン記念柱のようにロンドンの象徴となることは間違いない」と述べた。

今年在位70年を迎えたエリザベス女王の名を冠した新路線は、ついにロンドン市民にその約束を果たすことになる。

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