インドが目指す高速鉄道革命、進展のスピードは各駅停車
(CNN) 乗客ですし詰めになったムンバイの通勤電車からダージリン・ヒマラヤ鉄道で運行する驚きの「トイ・トレイン」まで、鉄道はインドで最も注目に値する特徴の一つであり、これなくして同国が今日のような経済大国に進化していたとは考えにくい。
しかし国の発展に伴い、インドの鉄道には一段のプレッシャーがかかるようになっている。時代の流れに乗り、移動時間を短縮し、貨物の最大積載量を増やしつつ、拡大する国内産業に資することが求められているのだ。
従来の鉄道網(一部は大英帝国の時代までさかのぼる)は、これまではインドの役に立ってきたかもしれないが、次第に時代遅れになりつつある。特に隣国であり、地域の覇権を争うライバルでもある中国の急速な発展ぶりと比較すると、どうしても見劣りしてしまう。
インド鉄道(IR)の鉄道網の総延長距離は12万6510キロで、世界第4位の規模を誇る。1日あたり1万9000本の列車を運行し、約8000の駅をカバーしている。そして機関車両1万2700両以上、旅客車両7万6000両、貨物車両約300万両を所有する。
インドで最初に鉄道の建設が提案されたのは1832年で、世界初の公共用鉄道である英国のストックトン・アンド・ダーリントン鉄道の開通からわずか7年後のことだ。
そして、53年4月にようやくボンベイ(現在のムンバイ)とターネーを結ぶグレート・インディアン・ペニンシュラ鉄道の最初の区間が開業した。この2都市を結ぶインド初の高速旅客鉄道が、ムンバイ・アーメダバード間を結ぶ新幹線の一環として、向こう10年以内に開業する予定だ。
速度は遅くとも望みは高く
2019年から20年にかけて、インド鉄道はのべ80億人以上の乗客と、計12億トンの貨物を輸送した。同社は140万人もの従業員を抱えるインド最大の雇用主であり、世界最大の非軍事組織の一つでもある。
鉄道会社に限れば、従業員数でインド鉄道をしのぐのは従業員数200万人の中国の国有鉄道、中国国家鉄路集団のみだ。
しかし、欧州や中国、日本、韓国の鉄道と比較すると、インド鉄道の平均速度は残念ながら依然として非常に遅い。一部の特急列車は時速160キロかそれをわずかに上回る速度で走行可能だが、国内の長距離急行列車の平均時速はわずか50キロで、普通の旅客列車や通勤電車に至っては時速32キロがやっとだ。
貨物列車の平均時速は約24キロで、最高速度も一般に55~75キロにすぎず、列車が輸送能力を増やさないと、今後30年間に混雑がさらに悪化することが予想される。