ジャガーの「問題」にまつわる誤った認識
ニューヨーク(CNN) 1年近く前、英高級車ブランドのジャガーはブランドアイデンティティーの刷新を発表した。それは同社の未来を告げるものになるとみられていたが、これまでのところ、主に頭痛の種となっている。
102年の歴史を持つジャガーは、上記のアイデンティティー刷新を謳(うた)った広告キャンペーン開始前から既に問題に悩まされていた。経営陣の交代、新味のないラインアップによる売り上げ減少、そしてドイツの高級車メーカーや比較的新興の電気自動車(EV)メーカー、米テスラといった企業との熾烈(しれつ)な競争などだ。
今やジャガーはさらに二つの問題を抱える。販売に関する誤解を招くような見出しと、右派からの激しい反発だ。後者には米国の大統領も加わっている。
トランプ米大統領は4日、昨年のジャガーの広告キャンペーンを「愚か」であり「まさしく『WOKE(ウォーク、意識の高い人たち)』」と酷評した。この広告キャンペーンは「鮮やかに生きよう」といったスローガンや、ジェンダーフルイド(性別が流動的)に見えるモデルが登場する前衛的な内容で、ジャガーの車両は実物の画像どころかコンセプトカーのイメージすら一切紹介されていなかった。
「あんなにひどい広告を見て、ジャガーを買いたいと思う人がいるだろうか」とトランプ氏は自身のSNSトゥルース・ソーシャルへの投稿で皮肉を込めて語った。「何十億ドルもの金が愚かにも失われ、時価総額は前例がないほど下落した」ともコメントした。
しかし、現実は異なる。
ジャガー・ランドローバー(JLR)は、インドのタタ・モーターズが米フォードから買収した2008年以来、同社の傘下にあり、時価総額はゼロだ。一方、タタ・モーターズ自体の業績は順調で、巨大な多国籍コングロマリットとして約280億ドル(約4兆円)規模の多様な事業を展開している。