米中貿易戦争の最前線、海運業界に生じる混乱 米玩具業界にも深刻な打撃

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テキサス州ヒューストンに向かうワンモダン号/Rebecca Wright/CNN via CNN Newsource

テキサス州ヒューストンに向かうワンモダン号/Rebecca Wright/CNN via CNN Newsource

(CNN) 米国が4月2日に世界の大半の国々に対する包括的な関税を発表したことで、世界中の物品の自由な流通を可能にする複雑なグローバルサプライチェーン(供給網)、特に製造品の90%を輸送する海運業界には混乱が生じた。

大半の関税については別途90日間停止されているにもかかわらず、企業幹部らは、関税が再び課される前提で事業を運営しなければならないと話す。

米国企業は貿易戦争の休戦中に商品の備蓄に努めている。需要に応えるため中国の工場をフル稼働させ、海運会社にはこの期間内に最大限の商品を納入するよう働きかけている。

「企業が前倒しで調達しようとするのは、ほんの数週間後がどうなるか分からないからだ」と、北京に拠点を置く中国欧盟商会のイェンス・エスケルンド会頭は述べた。「計画することが非常に難しくなり、非効率が生じている。結果的にはコスト増につながるだろう」

「ばく大な富の破壊」

オーシャンネットワークエクスプレスジャパンが所有する全長302メートルのワンモダン号には、衣類、家具、自動車部品など、主に中国製の製品が詰め込まれたコンテナが最大7000個積まれている。行き先は米国だ。

6月初旬に香港に停泊しているときのワンモダン号の船員/Rebecca Wright/CNN
6月初旬に香港に停泊しているときのワンモダン号の船員/Rebecca Wright/CNN

米国との貿易摩擦にもかかわらず、船員たちは驚くほど冷静に見える。これは、海運業界の特徴となっている回復力の表れだ。近年、海運業界は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)、スエズ運河の封鎖、紅海におけるイエメンの反政府武装組織フーシによるミサイルの脅威など、数々の危機を乗り越えてきた。

米国側では、中国からの輸入に依存している企業の一部が経営難に陥っている。

「こうした企業の一部は衰退するだろう」と、シカゴに拠点を置く知育玩具企業ラーニング・リソーシズのリック・ウォルデンバーグ最高経営責任者(CEO)は指摘する。「ばく大な富が破壊され、回復は不可能だと思う」

米国玩具協会によると、米国で販売される玩具の80%近くが中国製であるため、玩具業界は特に深刻な打撃を受けている。

闘うことを選択

貿易戦争をめぐり、ウォルデンバーグ氏はトランプ政権を相手取った訴訟に勝訴したが、連邦地裁による関税差し止めの判断は、政府の上訴により現在執行停止となっている。

「もちろん、闘わざるを得なかった」「ノックアウトパンチは受けられない」(ウォルデンバーグ氏)

米国で500人の従業員を擁するラーニング・リソーシズは現在、米中間の「メロドラマのような浮き沈み」を回避するため、玩具生産の一部を中国から積極的に移転させている。

一方で、貿易戦争の目標の一つとされる米国への生産拠点の移転は、「官僚の空想に過ぎない」と一蹴する。米国には現在、十分な生産能力がないからだ。

トランプ大統領はこれまで、関税が米国企業や消費者に与える影響を軽視している。4月30日の閣議では、米国に到着するコンテナ船について「物資が山積みされているが、その多くは必要ないものだ」と評し、「子どもたちが手にする人形は30体ではなく、2体になるだろう」「人形2体の値段は通常より数ドル高くなるかもしれない」と述べた。

ウォルデンバーグ氏は、小売店は確実に品切れを起こすとの見方を示す。

業界のトップらは、品不足に加え、あらゆる経済的負担が米国民に転嫁されることも明確に認識している。

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