(CNN) トランプ米大統領の2期目に現時点で暗い影を落としている最大の問題の一つは、勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン元被告に関連する文書について、トランプ氏の支持者らが実際のところどの程度気にかけているのかだ。
大いに気にかけているのと、少しは気にかけているとの違いは、極めて重要だ。前者であれば問題は長く残り、中間選挙にまで広がる可能性がある。普段は本人に忠実な支持基盤の投票結果に影響を及ぼすことにもなりかねない。後者であれば単なる見苦しいエピソードの域を出ず、最終的に問題は消えてなくなる公算が大きい。
それでは、論争の的となったエプスタイン絡みのメモを司法省が公開してかなりの時間が経過した今、共和党支持者らは一体この問題全般に関してどの程度の関心を寄せているのだろうか。
一連の新たな世論調査の結果から、彼らはトランプ政権によるこのスキャンダルの対応に納得していないことが分かる。また共和党自体にとっても、問題が長期化する可能性があることが示唆される。
支持層の見解は、政権の行動についてほぼ等分に別れている。つまりこの件には、これまでトランプ氏に関して見られた中でも、より高い度合いでの懐疑論が存在するということだ。そして延々と続く共和党の懸念の水準は、実際にはそれだけで済まない可能性もある。
米国人全体は否定的、共和党もいつになく分裂
トランプ政権のこの件の扱いに対しては、複数の世論調査から広範な不満が見て取れる。
ロイター通信とイプソスが実施した世論調査及びキニピアック大学による世論調査のいずれでも、米国民全体ではトランプ政権によるこの問題の対処への不支持が支持を大幅に上回った。前者では不支持54%に対し支持が17%、後者では不支持が63%に対し支持が17%だった(前者の質問はトランプ氏個人に関するもので、後者はより政権全体について尋ねる内容だった)。
どちらの調査でも、トランプ氏と政権が適切に対応したと回答した米国民は17%のみ。その大多数は、当然ながら共和党支持者だった。
しかし共和党支持者に特化して結果を分析すると、支持者の間でも見解はほぼ真っ二つに割れていた。トランプ政権の行動に関してこのような結果が出るのは珍しい。エプスタイン事件に絡む対応で、ロイター通信とイプソスの調査では支持35%に対し不支持29%、キニピアック大学の調査では支持40%に対し不支持36%だった。
トランプ氏の重要な行動を巡り、過去に共和党支持者がこれほどどっちつかずだった問題というのもなかなか思い浮かばない。例えば2021年1月6日に発生した連邦議会議事堂襲撃では、多くの人々がトランプ氏の政治家としてのキャリアが終わると結論づけたが、その事件の直後でさえ、共和党支持者を対象にしたCNNの世論調査ではトランプ氏の対応を支持する回答が63%と、不支持の32%を大きく上回っていた。
共和党支持者の多くはトランプ氏否定せず、今後変わる可能性も
しかしながら相手への幻滅と、本人を政治的に見捨てることとは同じではない。厳密に人々が実際はどれだけ問題を気にかけているのかが重要なポイントになる。
共和党支持者がことの重要性を軽視しているとの証拠もある。例えばCBSとユーガブが20日に公開した最新の世論調査では、共和党支持者の間でトランプ氏の大統領の実績を評価するに当たりエプスタイン関連の事柄が「大いに」重要だと答えたのは11%だけだった。有権者全体では36%がそのように回答した。
それが事実であれば、トランプ氏は現状をやり過ごすこともできそうだが、世論調査には一定の弱点が付いて回る。それは回答者が自分自身や世論調査会社に対して、いつも完全に正直だとは限らないという点だ。
例えば22年の中間選挙の前、従来の通念では議事堂襲撃を受けて民主党が民主主義に焦点を当ててもそれは成果に結びつかず、この問題で共和党の票が伸びる可能性さえあった。
それでも最終結果が示したように、当該の争点は民主党に大きな恩恵をもたらした。20年大統領選の結果を否定する共和党の一派はそれ以外の共和党議員よりも相当に手痛い打撃を被った。
エプスタイン事件に関して、CBSとユーガブの世論調査は人々の中にギャップが存在していることを示唆する。彼らが口にする問題への関心度合いと、その他の感情や行動で明らかになる事柄との間には齟齬(そご)が生じている。
調査によると共和党支持者の50%は少なくとも一定程度、政権のエプスタイン事件の対応に満足していると答えた。一方で83%は司法省に対し、所有するエプスタイン関連の情報を全て開示するべきだと回答した。これについてトランプ政権は、開示しないとする決定を既に下している(政権は先週、エプスタイン元被告を巡り非公開で行われた大陪審証言を公開するよう裁判所に請求したが、それは情報のごく一部に過ぎず、大半は非公開のままになる可能性がある)。
同じ世論調査で、共和党支持者の9割はエプスタイン文書に関して、恐らく富裕層や権力者についての不都合な情報が含まれているとの見解を示した。
同様にロイター通信とイプソスの調査では、連邦政府がエプスタイン元被告の死についての情報を隠していると思うとの回答が55%、思わないとの回答が17%だった。また元被告の顧客に関する情報を隠していると思うとの回答は62%、思わないとの回答は11%だった。
これらの回答が示唆するように、共和党支持者は政権からの情報公開が乏しいことに不満を抱いている。ただ明確に質問される場面でも、その不満をはっきり表明しようとはしていない。
トランプ氏への支持は極めて中途半端
また世論調査からは、トランプ氏の支持者であっても、多くは十分な自信を持ってそうした態度を取っているわけではないことが分かる。
ロイター通信とイプソスの調査で共和党支持者によるトランプ氏の行動への評価はほぼ二分したが、同氏の行動を「強力に支持する」と答えたのはわずか11%だった。
CBSとユーガブの世論調査では共和党支持者の半数が、少なくとも一定程度はトランプ政権の行動に満足していると回答したものの、「非常に」満足と答えたのは10%のみだった。
つまり現状を検証した上で、完全にこれを認めると明言する共和党支持者は、10人中1人しかいないことになる。
CBSとユーガブの世論調査によれば、トランプ氏の掲げるMAGA(米国を再び偉大に、の意味)運動に共鳴する支持者は、どちらかと言えば満足の方向に傾きがちだ。少なくとも「一定程度」は満足と答えたのはMAGA派が60%だったのに対し、MAGA派以外の共和党支持者は41%だった。
では、かねてエプスタイン事件の一段の情報公開を声高に叫んでいたMAGA派の共和党支持者は、非MAGA派の同胞よりも現状に満足しているのだろうか。それとも彼らは単に、トランプ党としての方針に少なくとも一定程度は従わなければならないと感じているだけなのか。
とにかく、こうした数字が出たからといって、現状がトランプ氏の支持基盤の重大な領域に今後問題をもたらさないということにはならない。これらの有権者がトランプ氏にそっぽを向く可能性も、少なくとも一定程度は存在する。恐らくそれは、最近のトランプ氏の行動で彼らが気に入らないものとセットになる形で起きるだろう。具体的にはウクライナでの戦争のような問題だ。
トランプ氏が03年、エプスタイン元被告の50歳の誕生日に手紙を書き送ったと主張する米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道により、エプスタイン事件に注力する多くのインフルエンサーはかえってトランプ氏支持で結束を固めたようだ。相手の大手メディアは、こうしたインフルエンサーにとってしばしば共通の敵となる。トランプ氏は手紙を書いたことを否定し、WSJを提訴した。支持者の大半も、どうやら同氏がでっち上げの罪を着せられていると信じている。
とはいえ、彼らは現状について全般的に満足しているわけではなく、問題を水に流すつもりもない。データが示唆するように、今もトランプ氏の前には地雷原が広がったままだ。
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本稿はアーロン・ブレイク記者による分析記事です。