中国、米ウェルズ・ファーゴ幹部の出国を禁止
ニューヨーク(CNN) 米金融大手ウェルズ・ファーゴの幹部社員が、訪問先の中国からの出国を禁じられた。世界第2位の経済大国である中国への訪問がもたらす潜在的影響について、欧米の企業幹部たちの懸念を増幅させかねない最新の事案となっている。
中国当局は21日、ウェルズ・ファーゴの幹部、マオ・チェニュエ氏に対する出国禁止令について、犯罪捜査の一環だと発表した。
中国外務省の報道官は定例記者会見後、マオ氏は中国当局が扱っている刑事事件と関連があると説明。当局は合法的に同氏の出国を制限していると述べた。
刑事事件の対象も、マオ氏がどのように関連していると考えられているのかも明らかではない。
「中国の法律に従ってこの事件は現在捜査中であり、マオ氏は一時的に出国できない。同氏には捜査に協力する義務がある」「捜査中、当局は同氏の法的権利が守られるよう保証する」(外務省報道官)
ビジネス向けSNS「リンクトイン」のプロフィルによると、上海生まれでアトランタを拠点とするマオ氏は2012年からウェルズ・ファーゴに勤務している。
かつてファクターズ・チェーン・インターナショナルとして知られていた企業のグローバル・ネットワーク、FCIによると、マオ氏はウェルズ・ファーゴの国際ファクタリング事業を率い、多国籍企業に向けてクロスボーダー資本戦略に関するアドバイスを行っている。最近は、FCIの会長にも選出された。
ウェルズ・ファーゴは声明の中でCNNに対し、「我々はこの状況を注意深く追跡し、社員が一刻も早く米国に戻れるよう、適切なルートを通じて取り組んでいる」と述べた。
マオ氏が中国からの出国を阻止されたというニュースは、米紙ウォールストリート・ジャーナルが最初に報じた。ウェルズ・ファーゴはこの件に関して、これ以上のコメントを控えている。
マオ氏の電子メールの自動返信の内容から、21日の時点で本人は米国外にいるとみられる。
米紙ワシントン・ポストによると、今回の事案と同時期には米商務省に勤務する中国系米国人男性も中国からの出国を阻止された。
商務省の特許商標局で働くこの男性は、数カ月前に中国の家族を訪れていたが、ビザ申請時に米国政府で働いていることを明かさなかったという。
商務省はCNNの取材に対し、国務省に問い合わせるよう求めた。商務省の職員とウェルズ・ファーゴの幹部社員について国務省にコメントを求めたが返答はなかった。
国務省は現在、中国に対して「レベル2」の渡航勧告を出しており、「出国禁止を含む現地法の恣意(しい)的な施行」のため、米国人が中国本土へ渡航する際には「より一層の注意を払う」べきであるとしている。