湾岸アラブ諸国を覆う核の恐怖、原発攻撃やイランの報復も懸念

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
イラン・ブシェールの原子力発電所=2009年/Caren Firouz/Reuters

イラン・ブシェールの原子力発電所=2009年/Caren Firouz/Reuters

(CNN) イスラエルや米国がペルシャ湾に面したイランの核施設を攻撃する可能性や、イランの報復攻撃の可能性をめぐり、湾岸アラブ諸国が環境汚染に対する懸念を強めている。

オマーンでは核関連の事態への対応に関するアドバイスがメッセージアプリ経由で飛び交っている。最悪の事態が起きた場合、住民は「閉ざされた安全な屋内空間(できれば窓のない場所)に入って窓とドアを全て密閉し、エアコンと換気扇は切る」よう勧告されている。

バーレーンの国営通信は17日、非常事態に備えて33カ所のシェルターが用意され、全土でサイレンのテストが行われたと伝えた。この1週間で核に対する不安が強まる中、中東のメディア各社は放射能漏れが起きた場合にどう対応すべきかを伝えている。

ハーバード大学ケネディ校の中東問題研究員でバーレーン在住のエルハム・ファクロ氏は、イランの核施設をイスラエルと米国が攻撃する可能性をめぐり、住民の間で確実に不安が強まっていると指摘した。

イランで唯一稼働している原子力発電所はブシェールにあり、イランの首都テヘランよりも、米国の同盟国であるアラブ諸国数カ国の首都に近い。「特に水の共有に関して環境汚染の不安が強まっている」とファクロ氏は言う。

加えて、湾岸諸国の米軍施設に対するイランの報復攻撃の可能性も懸念される。そうなれば市民に被害が及びかねず、領空が長期間にわたって閉鎖される可能性もある。

例えばバーレーンにある米中央海軍司令部などが標的とされかねない。

バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)で構成する湾岸協力会議(GCC)は16日、クウェートを拠点とする緊急管理センターを稼働させ、環境問題および放射線問題に関して必要な予防措置を講じることを確認した。

湾岸アラブ諸国では、約6000万人がペルシャ湾の海水を淡水化して飲料水や生活用水として利用している。もしイランのブシェール原発が攻撃されれば、この貴重な水源の環境に重大な影響が及ぶ恐れがある。

カタールのムハンマド首相は今年3月、もしもブシェール原発が「吹き飛ばされたら」どうなるかと米国人記者に尋ねられ、「(水は)完全に汚染されるだろう。水も、魚も、何もない。生命がなくなる」と答えた。

「我が国には川も貯水池もない。つまり我が国は3日で水を使い果たす。これはカタールだけでなく、クウェートもUAEも同じだ」(ムハンマド首相)。カタールはその後、巨大な貯水池を建設している。

クウェートとUAEでCNNの取材に応じた住民によると、住民がパニックに陥る状況にはなっていないという。

「心配はしていない。ここは安全だという確信は揺らいでいない」とアブダビ在住の米国人女性は話す。「ただ、もし米国が(イランに対する)攻撃を決めた場合、次に何が起きるか分からないので不安になる」

ドバイ在住のエジプト人女性は、この国は安全だと感じているとしながらも、事態のエスカレートを伝えるニュースや戦争のニュースを見ると不安になると告白。「みんながストレスを感じている。それが現実になりつつある」「軽々しく受け止められる状況ではない。戦争を近くに感じる」と打ち明けた。

メールマガジン登録
見過ごしていた世界の動き一目でわかる

世界20億を超える人々にニュースを提供する米CNN。「CNN.co.jpメールマガジン」は、世界各地のCNN記者から届く記事を、日本語で毎日皆様にお届けします*。世界の最新情勢やトレンドを把握しておきたい人に有益なツールです。

*平日のみ、年末年始など一部期間除く。

「イスラエル」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]