イスラエルが米国に使用迫る「バンカーバスター」、その威力とは
地中貫通弾「バンカーバスター」とは
ワシントン(CNN) 米国のトランプ大統領が米軍の軍事資産を使用したイランの核施設攻撃に前向きな姿勢を示す中、政府高官や専門家は、米国の保有する3万ポンド(約13.6トン)級の地中貫通弾「バンカーバスター」が、フォルドゥ燃料濃縮施設を破壊可能な唯一の兵器だと示唆する。フォルドゥはイランによる核開発計画の鍵と目される施設で、山岳地帯の地中深くに展開している。
米空軍の概況報告書によれば、当該のGBU57A/B大型貫通爆弾(MOP)は、「厳重に保護された施設にある敵の大量破壊兵器まで到達し、破壊する」目的で設計されている。
米ワシントンに拠点を置く戦略国際問題研究所(CSIS)ミサイル防衛プロジェクト研究員のマサオ・ダールグレン氏はこの兵器について、6000ポンドの「高性能火薬」を搭載した3万ポンドの爆弾だと説明する。
爆薬が地面の衝撃に耐え、意図した深さまで貫通するためには、爆弾自体に「本当に分厚く、硬い外殻」が必要だとダールグレン氏は強調する。信管も高い強度を持ち、適切なタイミングで爆発させるための特殊な性能を備えている。「実に複雑なプログラムだ」(ダールグレン氏)
フォルドゥ燃料濃縮施設の正確な規模は不明。CNNの報道によれば、主要ホールは地下80~90メートルに位置していると推定される。英シンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)は最近の報告書で、MOPがフォルドゥに到達できない可能性もあると指摘。「施設を貫通する可能性を高めるには、同じ照準点で複数の衝撃を加えなくてはならなくなる公算が大きい」と述べた。
MOPの試験は2004年、大量破壊兵器への懸念が高まる中で始まったと、ダールグレン氏は言う。この爆弾の開発につながった要因の一つは、施設の入り口を爆撃しても「施設全体を破壊するのに十分な爆風圧を発生させることはできない」とする研究結果だったという。
施設の入り口を爆撃すれば一時的にプログラムの進行を遅らせることは可能だが、計画の全てを破壊することはできないと、ダールグレン氏は付け加えた。
09年、ボーイングはこの兵器システムを米軍機に統合する契約を獲得。空軍のB2スピリット(マルチロール重爆撃機)が、この爆弾を運用できる唯一の航空機となっている。
ノースロップ・グラマン社製のB2は、同社によれば「ステルス技術の主力」。ミズーリ州ホワイトマン空軍基地に配備されたその機体は、1988年11月に初めて公開された。米軍は2024年、B2を使ってイエメンでイランに支援されたフーシ派を攻撃した。この時は地下にある武器の貯蔵施設を狙った。
空軍によれば、この爆撃機は2人のパイロットクルーによって操縦され、無給油で約6000海里(約1万1000キロ)を飛行することができる。その 「ステルス」能力により、「敵の最も洗練された防御に侵入し、最も重要かつ厳重に守られた目標に脅威を与えることができる」と空軍は述べている。
現在何発のMOPを米軍が保有しているのかは不明。09年にボーイングが空軍に納入したのは20発で、その数は15年時点でも変わっていなかった。ダールグレン氏の推計では、現在米国の兵器庫にある弾数はおよそ30発とされる。