独首相、ガザ情勢めぐり異例のイスラエル批判 なぜこれが大ごとなのか
ベルリン(CNN) イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区で実施している地上作戦をめぐり、ドイツのメルツ首相は27日、訪問先のフィンランドで、「我々は民間人の運命とひどい苦しみに落胆している」と語った。
ドイツは何十年にもわたって、イスラエルと硬い結びつきを保っており、ユダヤ人を迫害したという暗い歴史が、ほぼ疑うことなくイスラエルを支持するという現代の政策を形作っている。
2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲後、ドイツではイスラエルに対する政治的・軍事的な支援の問題が提起されたが、当時のショルツ首相はこうした姿勢を再確認していた。
だが、ここ数日のメルツ氏による発言によって、ドイツの対イスラエル支援が注目を集めている。
メルツ氏がイスラエルへの態度を大きく変えた原因は判然としない。ドイツ国際安全保障問題研究所(SWP)でドイツとイスラエルの関係を専門とするペーター・リントル氏は、メルツ氏が新たに首相に就任し、イスラエルの指導者との対話を開始し、方向性を理解したうえで、自身の立ち位置を明らかにしたいと考えていたのではないかとの見方を示す。
リントル氏はCNNの取材に対し、「世界のほとんどすべての国が出した結論は、これはもはや目的もはっきりとしない恐ろしい戦争だということだ。これは、明らかにドイツ政府の姿勢と立場の変更だ」と語った。
メルツ氏はさらに、ガザでのイスラエル軍の行動にも疑問を呈した。
メルツ氏は、ガザにおけるイスラエル軍の作戦拡大と人道危機について、「テロとの戦いと人質解放という目標に対してもはや何の合理性も見いだせない。この点において、私はこの数日の出来事を非常に批判的に見ている」と述べた。
メルツ氏はまた、イスラエルが国際法に違反している可能性があることについても言及した。ドイツ首相によるこうした発言は、これまでは考えられなかった。
ドイツの長年にわたるイスラエルに対する姿勢は「国益」と結びついているため、今回のような論調の変化は特に印象的だ。
ドイツとイスラエルとのつながりは、08年に当時のメルケル独首相によって提唱された。メルケル氏は、イスラエル国会(クネセト)で、「ドイツの歴史的責任は我が国の国益の一部だ。つまり、ドイツ首相である私にとって、イスラエルの安全保障は決して譲れないものだ」と語った。
ショルツ前首相もハマスによる奇襲後、同様の発言をしていた。
SWPのリントル氏は「尊敬される政治家になりたいのなら、この言葉を使わなければならないようだ。なぜなら、この言葉は、イスラエルの安全保障はドイツの国益だというメッセージを送るようになったためだ。これは、我々が過去から距離を置くための最低限の基準だ」と述べた。
その「過去」とは主に、ナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を殺害したホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を指している。
メルツ氏は27日、「国益」を完全に放棄するわけではないことも強調した。「イスラエルの安全と存在は、我々が何十年にもわたり言及してきたように、ドイツ国家の存在の一部だ」。
リントル氏は、「この政府がどう行動するのか、イスラエルに対するこの政府の政策がどうなるのか、我々は知らなかった。今は、ある程度わかっている」と言い添えた。