平和への道筋は見えず、中ロ首脳会談の5つのポイント

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モスクワでの中ロ首脳会談で浮き彫りになったポイントとは/Grigory Sysoyev/AFP/SPUTNIK/Getty Images

モスクワでの中ロ首脳会談で浮き彫りになったポイントとは/Grigory Sysoyev/AFP/SPUTNIK/Getty Images

香港(CNN) 中国の習近平(シーチンピン)国家主席とロシアのプーチン大統領は、数多くの問題で互いの足並みがそろっていることを完全に断言し、米国に対する疑念も共有した。モスクワで今週行った首脳会談後の長い声明の中で明らかにした。

会談はロシアによるウクライナ侵攻の陰で開かれ、中国側にロシアとの関係を深めたいとの意向があることは疑いの余地がない。プーチン氏が国際舞台で一段と孤立を深め、壊滅的な戦争が2年目に突入しているにもかかわらずだ。

一方、当該の紛争を解決に導く上で、会談は目立った変化をもたらすには至らなかった。

むしろ習氏の3日間のモスクワ滞在を通じ、「友好国」を自称する中ロ両国は、自分たちがいかにして1つの世界秩序を提示し得るのかを明確にした。それは米国並びに民主主義を掲げる同盟国が主導していると彼らがみなすもう一方の世界秩序への反撃を念頭に置く。

クレムリン(ロシア大統領府)の記録によると、会談で合意に達した10を超える事項は、貿易やテクノロジー、国家宣伝に至る領域での協力関係を強化する。両首脳の主要な声明は、中ロ両国が今後どのように関係を「深化」させるかに焦点を当てる内容だった。

習氏の訪問と対照をなす別の首脳訪問も、同じタイミングでこの地域で実現していた。

米国の同盟国である日本の岸田文雄首相は21日にウクライナに到着し、ゼレンスキー大統領と会談した。これは欧州における紛争がアジアの分断をも深めている実態を浮き彫りにするものだ。

以下、習氏とプーチン氏の会談について理解しておく必要のあるポイントをまとめた。

ウクライナ関連で意味のある前進はなし

会談でウクライナでの戦争の解決に向けた突破口が開かれることはなかった。中国外務省が公開した共同声明によれば、両首脳は「緊張を高め」たり、戦争を「長引かせ」たりする行為をやめるよう求めた。

声明は、ロシアによる侵攻と軍事攻撃がウクライナでの現行の暴力及び人道危機の原因だとは認めなかった。

両首脳はまた北大西洋条約機構(NATO)に対し、他の国々の「主権、安全保障、国益を尊重する」ことを強く要求。長年主張してきた言説を改めて繰り返してみせた。ロシアと中国は、NATOがロシアを挑発して侵攻を引き起こしたとする誤った非難を展開している。

新たな世界秩序と反米国での協調

専門家は中国とロシアが米国への対抗姿勢で足並みをそろえつつあること、加えてより独裁的な自分たちの政策方針に合った世界秩序の構築こそが会談の原動力だったと指摘する。そこにウクライナでの戦争の解決に向けた関心は存在しない。

習氏は21日、プーチン氏との晩餐(ばんさん)会を終えてクレムリンを後にする際のメッセージで世界の力学が移行しているとの自説を改めて強調。プーチン氏と別れの握手を交わしながら、「我々は共にこの変化を推し進めるべきだ。過去100年間、こうした変化は起きていなかった。ごきげんよう」と述べた。この言葉は現在の状況について、西洋が衰え、中国が台頭していく時代だとする習氏の見解を示唆する。

「軍事上の相互信頼」と防衛協力関係

今回、北大西洋条約機構(NATO)や米英豪3カ国の協定「AUKUS(オーカス)」といった枠組みがもたらす脅威は、両首脳による議論の明確な焦点として浮上した。

そこにはアジアに対する影響も含まれる。習氏とプーチン氏が共同声明の中で共に「深刻な懸念」を表明したのは、NATOが「アジア太平洋諸国との軍事並びに安全保障関係を継続的に強化」していることだった。両氏は「外部の軍事勢力が地域の平和と安定を損なうのに反対する」と述べている。

中ロ両国は「軍事上の相互信頼を一段と深める」と約束。軍事交流及び協力の強化に言及したほか、海事と航空の合同パトロールも定期的に運営するとした。

ウクライナでの戦争が始まってから、両国は世界中で合同軍事演習を継続的に実施している。

経済とエネルギーの後押し

プーチン氏は21日、ロシア政府が「西側の企業にとって代わる」中国の企業を支援する用意があることを明らかにした。ウクライナへの侵攻開始以降、西側企業はロシアから撤退している。

大規模な経済制裁の実施を受け、ロシアの中国への依存は強まる一方だ。ロシアにとっての中国は資源などの輸出先だけでなく、電子製品の輸入元としての役割も担う。

欧州がロシア産の資源への依存を断つ中、中ロはエネルギー貿易を過去1年で大幅に増加。今後も一段と拡大させる用意があるとみられる。

分断された世界

モスクワでの首脳会談とはっきり好対照をなしたのは、同じタイミングでウクライナで行われたゼレンスキー大統領と岸田首相の会談だった。ゼレンスキー氏は岸田氏をはじめこれまでウクライナを訪問した首脳らについて「敬意を示している」と称賛。そこには同国に対する敬意だけでなく、「世界の文明化した統治、文明化した生活を維持し、かつ機能させること」への尊重も含まれるとした。

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