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ロシアがスーダンで奪う金、ウクライナ侵攻を後押し

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ロシアがスーダンの金と引き換えに軍事政権を支援する構図が見えてきた/Illustration by Will Mullery, CNN; Photos by Alex Platt, CNN

ロシアがスーダンの金と引き換えに軍事政権を支援する構図が見えてきた/Illustration by Will Mullery, CNN; Photos by Alex Platt, CNN

この件を直接知っている文民の元当局者によれば、スーダンの民主化を支援する監視機関として発足した汚職対策委員会が、法の目を潜り抜けようとするこの試みを阻止した。21年9月、汚職対策委員会はメロイー・ゴールドがアルソラジに資産を移行している証拠を記載した詳細な報告書を軍に送り、委員会がいうところの「国家に対する犯罪」を止めるよう要請した。

同委員会は軍がロシアの取引に加担しているとも非難し、これが軍指導部の怒りを買った。この元当局者によれば、軍は委員会が「軍を傷つけている」と厳しく批判した。

「ロシアとスーダンの職員は、政府内の文民を自分たちの策略の邪魔者とみなしていた」とその元当局者は付け加えた。

汚職対策委員会がメロイー・ゴールドからアルソラジへの資産譲渡を阻止してから1か月が経過した21年10月、スーダン軍はクーデターを起こし――米当局者や元当局筋は、ロシアが裏で肩入れしていたと非難している――軍事政権はただちに委員会を解体した。

「ロシアは寄生虫だ」と元当局者はCNNに語った。「スーダンを略奪した。民主化計画の息の根を止め、政治的に非常に大きな罰を与えた。民主化計画はスーダンをすばらしい国にすることができたはずだった」

準国軍部隊「迅速支援部隊(RSF)」の指導者モハメド・ハムダン・ダガロ将軍は、ロシアの支援で恩恵を受けている主要な人物で、ロシア政府から武器や軍事訓練を受けている。CNNのスーダン情報筋は、スーダン軍のトップであるアブドゥル・ファッターハ・ブルハーン氏もロシアから支援を受けているとの見方を示す。

人権団体は、ブルハーン氏とダガロ(通称ヘメッティ)氏が03年に勃発したダルフール紛争で戦争犯罪や人道に対する犯罪に関わっていたと示唆している。

22年にロシアがウクライナ侵攻を開始したのと同じ日、ヘメッティ氏は両国間の「関係強化」のためにモスクワでスーダン代表団を率いていた。

現地で活動するワグネル工作員

19年3月、ほこりの立ちこめる中央アフリカとスーダンの国境で、眼鏡をかけた34歳のロシア人が大慌てで上司であるメロイー・ゴールドのオーナー、ミハイル・ポテプキン氏に助けを求めた。

「誰も事前に知らされなかったことに、ラジーミルが怒っている」。ドシエセンターがCNNに提供したテレグラムのやりとりで、アレクセイ・パンコフ氏はこう書いている。ここで同氏が言及しているのは、スーダンの諜報(ちょうほう)工作員とともに国境に配置されたワグネルの威嚇的な上級工作員、クズネツォフ氏のことだ。

「『内密の』作戦だったとラジーミルに伝えろ。だから彼には知らせなかった」とポテプキン氏は返信した。

「くそっ、ラジーミルは恐ろしい奴だ。クソを漏らすかと思った」と、パンコフ氏は返信した。

CNNが入手した一連の証拠からは、クズネツォフ氏がスーダン各地の要衝でワグネルの任務を遂行する重要人物であることが示されている。前述のやりとりはその一つだ。

さらにスーダン政府の公式声明の中には、アルイバイディヤ近辺のロシア加工工場で警備を統轄していたクズネツォフ氏を「問題の多い」武装ロシア人と呼んでいるものもあった。メロイー・ゴールドのスーダンでの業務に詳しい情報筋がCNNに語ったところによれば、クズネツォフ氏はハルツームにある同社の事務所にも足しげく通っていた。

ドシエセンターによると、ワグネル工作員は交替でスーダンに配属される。クズネツォフ氏もスーダンに配属されたワグネル工作員の1人と思われる。ロシアの密輸の仕組みはウクライナ戦争が勃発して以来重要性を増しているが、こうした仕組みを守るために工作員は戦略的に派遣される。

情報筋の話では、ロシア政府がスーダンからの金供給の掌握を強める中で、こうしたワグネル工作員は同国で高まりつつある恐怖の存在の一部になっているようだ。

本記事を書くにあたり、CNNが参照したいくつかの現地報道ネットワーク――ムジョプレス、アルバシュム、活動家でジャーナリストのヒシャム・アリ氏のフェイスブックページなど――はこの数か月で標的にされ、関係者は暗殺の脅迫を受けて亡命を余儀なくされている。6月だけでも抗議デモ中に銃で撃たれた10人のうち3人が民主化運動の著名な活動家だった。CNNの治安当局筋は、みな意図的に標的にされたと考えている。

スーダン政府の複数の高官はCNNのニマ・エルバジル記者に、抗議デモの現場には近づかないよう何度も念を押した。複数のスーダン治安当局筋の話では、CNNがこの記事の調査を始めてからというもの、エルバジル記者は軍事政権の暗殺リストに名前が挙がっているという。

2月下旬、ウクライナ首都キーウを包囲しようとするロシア軍戦車の映像がハルツーム国際空港のテレビ画面に映し出される中、空港職員はクッキーと金を積んだ飛行機が離陸するのを眺めていた。結局は上級将校が介入してきたのだった。そして不吉な予感が走った。

事情に直接詳しい情報筋によると、密輸品を発見した職員の一部は転属となり、地方に飛ばされたり、軍の予備部隊に派遣されたりした。

「みな自分の仕事をしたがために代償を払うことになった」とその情報筋はCNNに語った。

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