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ロシアがスーダンで奪う金、ウクライナ侵攻を後押し

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小規模鉱山で働く男性/Alex Platt, CNN

小規模鉱山で働く男性/Alex Platt, CNN

ロシアの金採掘事業の中心地はスーダン北東部の砂漠の奥地にある。白茶けた景色にぽっかり空いた割れ目が点在し、鉱山労働者たちが灼熱(しゃくねつ)の暑さの中で根気よく作業している。休息が取れるとすれば、シートの切れ端と砂袋で作ったテントの中だけだ。

毎朝こうしたへき地の小規模鉱山から、鉱山労働者たちが「黄金の町」と呼ばれるアルイバイディヤに集まる。金の入った袋をロバが引く荷車に積んで、舗装されていない道沿いに運んでくる。自分たちの商品に最高値をつけるのは、ほぼ間違いなく近くの加工工場から派遣される商人だと人々は言う。地元の人々はこの工場を「ロシアの会社」と呼んでいる。

ロシアの金密輸の中核にあるのは雑な売買プロセスだと情報筋はCNNに語る。CNNが確認した公式統計によれば、スーダンの金の85%前後がこうしたやり方で売買されている。鉱山の内部告発者や治安当局者など複数の情報筋によれば、こうした取引のほとんどは記録されず、またロシアが市場を独占している状況だという。

スーダン北東部アトバラの南約100キロの鉱山で働く人/Alex Platt, CNN
スーダン北東部アトバラの南約100キロの鉱山で働く人/Alex Platt, CNN
アトバラとポートスーダンを結ぶ高速道路のすぐ近くにある小規模鉱山。やけるような熱さで遮るものがほとんどないなか労働者は働く/Alex Platt, CNN
アトバラとポートスーダンを結ぶ高速道路のすぐ近くにある小規模鉱山。やけるような熱さで遮るものがほとんどないなか労働者は働く/Alex Platt, CNN

少なくとも10年間、ロシアはスーダンでの金取引を公式な記録から隠ぺいしてきた。ロシア政府による膨大な金取引を示す多くの証拠があるにもかかわらず、スーダンの公式海外貿易統計には11年以降、ロシアからスーダンへの金輸出量がゼロと一貫して記載されている。

ロシアは政府の把握しない多数の場所で利益を得ているため、スーダンから持ち出された金の正確な量を確認するのは困難だ。だが少なくとも7人の事情通が、スーダンの金密輸の大部分を進めているのはロシアだと非難している。公式統計によれば、近年ではスーダンの金の大半が密輸に流れている。

スーダン中央銀行の内部告発者がCNNに提示した集計表の写真には、21年に32.7トンの金が所在不明であることが記されていた。現在のレートで換算すれば、1トン6000万ドル(約81億円)計算で19億ドル(約2600億円)相当の金が行方知れずということになる。

だが複数の現旧の当局者は、行方知れずの金の数量はさらに多いと言う。非公式の小規模鉱山で産出される金の量をスーダン政府が大幅に低く見積もっているため、実際の数字がゆがめられているというのだ。

CNNに内部情報を提供した人々の多くが、スーダンで産出される金の約90%が国外に密輸されていると主張する。これが事実なら、ざっと134億ドル(約1兆8000億円)相当の金が関税や規制を逃れていることになり、政府の歳入が数億ドル失われている可能性がある。CNNはこの数字について独自に確認できていない。

数年にわたりロシアの金取引を追ってきたスーダンの汚職対策捜査官が、ロシアの主要加工工場の位置をCNNに提供してくれた。CNNが現地に行ってみると、そこはアルイバイディヤから8キロほど離れたところで、施設の頭上にはソビエト連邦の旗がはためいていた。施設前にはロシアの給油トラックが1台停まっていた。

ソビエト連邦の旗が掲げられた処理工場がスーダンの砂漠奥深くにある。地元住民には「ロシアの会社」として知られる/Alex Platt, CNN
ソビエト連邦の旗が掲げられた処理工場がスーダンの砂漠奥深くにある。地元住民には「ロシアの会社」として知られる/Alex Platt, CNN

偶然出くわした警備員は施設がいわゆる「ロシアの会社」だと認めた。警備員との軽いやりとりは、すぐさま緊迫した状況に転じた。

「ロシア人のマネージャー」と話をしたいというCNNの要望を警備員がトランシーバーで伝えると、スーダン人男性の一団が現場に駆けつけて取材陣に退去を命じた。その後CNNの車両は警備部隊に跡をつけられた。

「ここから立ち去れ」と別のスーダン人の工場従業員も取材陣に告げた。「ここはロシアの会社じゃない。アルソラジというスーダンの会社だ」

アルソラジはスーダン企業だが、米国の制裁対象となっているロシアの鉱山企業メロイー・ゴールドのダミー会社だ。このことは5人のスーダン当局筋とCNNが検証した会社登記簿で確認されている。

昨年アルソラジが設立されたことで、スーダンでのロシアの目に見える存在感は重要な転機を迎えた。新たなビジネスモデルでは、ロシアの取引は裏に消えて、その段取りはより一層スーダン軍指導部の手にゆだねられるようになった。ロシア側は地元企業を装って、海外企業を対象にした規制を含め政府機関をさらに回避できるようになった。CNNはスーダン軍指導部にコメントを求めたが、返答は得られなかった。

「あまりにも厳しいアメリカの監視」

21年、ロシアのウラジーミル・ゼルトフ駐スーダン公使は、スーダンの鉱山当局者との臨時会議を呼びかけた。

会議を直接知るスーダン鉱業省の内部告発者によると、ゼルトフ公使は見るからに神経をとがらせ、「あまりにも厳しいアメリカの監視」の対象になったメロイー・ゴールドを「目立たなくする」よう要求した。

ゼルトフ公使の要求は今年6月までに実現した。メロイー・ゴールドの資産をスーダン企業のアルソラジに移し替える作業はすでに完了しているようだ。両社の登記簿を調べたところ、法令上の罰を受けたリストが全く同一であるなど、類似性が極めて高かった。

スーダンの法律では、資産を譲渡したい企業は、企業に不利な決定も譲渡する必要がある。また、申告していない外国のパートナーを持つことは違法とされる。

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