フランスのビーチや公園が禁煙に、違反者は罰金 伝統文化に変化の兆し
パリ(CNN) フランス全土で7月1日から、ビーチや公園、庭園、バス停、学校前、スポーツ競技場など、子どもの多い屋外の公共の場での喫煙が全面的に禁止された。エマニュエル・マクロン大統領は「たばこを吸わない初の世代」を2032年までに実現させると宣言している。
禁煙区域で喫煙した場合は、観光客も含めて罰金の対象となる。罰金の額は15日以内に支払えば90ユーロ(約1万5000円)、それを過ぎると135ユーロに跳ね上がる。
欧州ではスペインやイタリアなどが自治体レベルで喫煙を規制しているが、国が一律にビーチでの喫煙禁止に踏み切ったのはフランスのみ。
もっとも、この対策を歓迎する市民ばかりとは限らない。
「私たちの基本的な自由がどんどん政府に奪われる」とこぼすのはパリ在住の学生(25)。「公園やビーチで吸い殻のポイ捨てをしないとか、他人に迷惑をかけないとか、マナーを守っていれば問題はないはず。なんで突然、喫煙が犯罪みたいに扱われるの?」とCNNに疑問をぶつけた。

政府の方針に疑問を投げかける学生(25)/Mark Esplin/CNN
たばこ文化といえばフランスの代名詞に等しい。ブリジット・バルドーからシャルル・ド・ゴールに至るまで、フランスを象徴する人物はほぼ例外なくゴロワーズ(フランスを代表するたばこ銘柄)を手にしていた。
しかし国民とたばことの関係は変わりつつある。
フランスの国立公衆衛生当局の24年の統計によると、同国の喫煙者は成人の約3分の1を占め、23%が毎日たばこを吸うと回答した。しかし若者の喫煙は減る傾向にあり、22年の調査で毎日喫煙すると答えた17歳は16%のみ。6年前の25%に比べて減少していた。
ただ、ベルギーや英国と違って、フランスの新規制では電子たばこは(少なくとも現時点では)禁止していない。しかし電子たばこについても許容するニコチン含有量の上限を引き下げ、若者狙いとの批判が強いコットンキャンディーなどのフレーバーには厳格な規制を設けた。
また、欧州で唯一、飲食店とバーのテラス席での喫煙を全面禁止しているスウェーデンとは対照的に、フランスはテラス席での喫煙は引き続き許容する。欧州で最も厳格な禁煙政策を打ち出している英国でさえも、パブのテラス席での喫煙は認めている。
「テラス席での喫煙についてはほぼ10年前から禁止させようとしてきたが、これは非常に難しい」とフランスの禁煙推進団体CNCTの広報は打ち明けた。「ワイングラスを傾けながらの一服は、フランス文化と切り離せない」
フランスでは07年から、飲食店やバー、ナイトクラブでの屋内喫煙が禁止された。当初は猛反発があったものの、時がたつにつれて受け入れられるようになったとCNCTの広報は指摘し、「将来的にはテラス席も禁煙になることを願う」と話している。
欧州連合(EU)の欧州委員会はがん患者を減らす対策の一環として、40年までにEUの喫煙人口を5%未満に減らす目標を掲げている。フランス政府は今回の規制について、さらなる禁煙の拡大に向けた第一歩となる可能性を示唆している。