「アリゲーター・アルカトラズ」、米フロリダ州の新たな移民収容施設について知っておくべきこと

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新たな移民収容施設で物議、フロリダ州の「アリゲーター・アルカトラズ」

(CNN) トランプ米大統領がフロリダ州マイアミに所有するリゾートから西へ80キロ足らず、エバーグレーズ国立公園の湿地帯の奥深くに、政権が取り組む移民政策の最新の戦場が存在する。新たに設置された不法移民収容施設、通称「アリゲーター・アルカトラズ」がそれだ。

ものの数日で、作業員らは現地の飛行場の滑走路を一時的な居住施設に作り替えた。トランプ氏は1日に当該の施設を視察した。

拡張が完了すれば、強制送還を待つ移民を最大で5000人収容できるようになる見通し。複数の当局者がCNNに明らかにした。

フロリダ州のデサンティス知事は先週の記者会見で、連邦政府からの要請で「アリゲーター・アルカトラズ」を設置したと説明。施設から逃げ出した者は大量のワニを相手にしなくてはならなくなるとし、可能な限り最も安全で確実な収容施設だと強調した。

共和党議員は大自然に守られた「低コスト」の施設とアピールするが、当該の計画は既に反発を招いている。移民の権利擁護団体や環境活動家が異議を唱えているだけでなく、地元の先住民族の共同体も、計画を自分たちの聖なる土地に対する脅威と捉えている。

エバーグレーズの「アルカトラズ」

トランプ氏は以前から、サンフランシスコ湾の島にかつてあった悪名高い刑務所「アルカトラズ」を再開する構想に魅了されている。同刑務所は事実上脱出不可能と考えられていた。

現在はフロリダ州の当局者らが、自分たちのアルカトラズを少なくとも一時的に開設するべく動いている。

州知事のオフィスによると「アリゲーター・アルカトラズ」は、「完全な自己充足型」の施設として設計されている。移民らは自然災害用の仮設住宅や「テント型の仮設設備」に収容されると、国土安全保障省(DHS)の当局者がCNNに明らかにした。

州当局者によれば、ハリケーンの上陸といった過酷な気象環境の発生を念頭に、収容施設向けの避難計画を策定中だという。

DHS当局者は施設内に最大でベッド5000床を設置できると見込む。1床当たりかかる1日分のコストは245ドル(約3万5000円)だという。

上下水道や電力といった設備は移動式の機器で供給されると州知事のオフィスは説明した。

デサンティス氏は収容施設について、一時的な収容を目的としたものであり、州の法執行機関や刑務所の負担を緩和するために必要だと強調した。トランプ政権の強硬な移民政策を受け、州内の関連機関や刑務所には移民が大量に流入している。

一方でデサンティス氏は、収容施設が政権の取り組みの「効果を増大させる」ことにも期待を示した。政権側は書類に不備のある移民の拘束、強制送還に力を入れている。

飛行場の滑走路が仮設住宅や巨大テントの集まる収容施設に転用される様子=6月30日撮影/WSVN
飛行場の滑走路が仮設住宅や巨大テントの集まる収容施設に転用される様子=6月30日撮影/WSVN

「非人間的な」施設との非難

「アリゲーター・アルカトラズ」の運営コストは1年で4億5000万ドルかかる見込み。DHS当局者がCNNに明らかにした。コストはまずフロリダ州が負担し、その後連邦緊急事態管理庁(FEMA)やDHSを通じて「立て替え経費の精算要求を提出」するという。

エバーグレーズの施設に移民を収容することを巡っては、フロリダ州の過酷な夏とハリケーンの懸念を理由に反対する意見が上がっている。

「アリゲーター・アルカトラズ」の建設に反対の声を上げる環境活動家ら=6月28日/Sentinel/AP
「アリゲーター・アルカトラズ」の建設に反対の声を上げる環境活動家ら=6月28日/Sentinel/AP

民主党や移民の権利擁護を訴える活動家は、当該の施設を「非人間的」と非難。フロリダ州の移民権利擁護に取り組むトーマス・ケネディ氏は、同州のアスマイヤー司法長官によるX(旧ツイッター)への投稿に怒りを表明した。アスマイヤー氏は収容者が施設を逃げ出してもすぐにワニやヘビに狙われると示唆していた。同氏は「アリゲーター・アルカトラズ」の通称の発案者でもある。

同様にホワイトハウスのレビット報道官も6月30日の会見で、ワニたちが抑止力となって収容者が脱走を試みなくなるとの見解を示している。

環境に「影響なし」との約束にも懐疑的な見方

マイアミデード郡の航空当局は長年現地の滑走路を飛行訓練のための設備として使用してきたが、先週で状況は一変した。州知事が緊急権限を発動し、「不法移民」対策を念頭に置いた収容施設の即時設置に動いたからだ。

マイアミデードのカバ郡長は、数千人を収容することによる環境面の影響について懸念を表明した。施設はフロリダ州に飲料水を供給する重要な水源に極めて近いという。

カバ氏の懸念を共有したとみられる複数の環境保護団体は6月27日、州知事側を提訴し、計画の阻止に動いている。

デサンティス氏は先週の記者会見で訴訟を過小評価し、施設が環境に与える影響は皆無との見解を示した。その上で、「人々はエバーグレーズを口実にしようとしているだけだと思う。実際は単に移民政策の執行に反対しているに過ぎない」と述べた。

先住民も「故郷のために立ち上がる」

飛行場や滑走路の近くに土地を持つ先住民族ミコスキー族のコミュニティーも、計画に反対の立場だ。同族の一員で環境活動家でもあるベティ・オセオラさんはCNNの取材に答え、 エバーグレーズでの一時的な収容施設の建設を侮辱と形容。建設地は部族にとっての聖なる土地に当たると主張した。

収容施設が環境面に及ぼす潜在的な影響について議論する、地元の先住民族ミコスキー族のベティ・オセオラさん(左)/Ricardo Rolon/USA Today Network/Imagn Images
収容施設が環境面に及ぼす潜在的な影響について議論する、地元の先住民族ミコスキー族のベティ・オセオラさん(左)/Ricardo Rolon/USA Today Network/Imagn Images

環境の面でも、「ハリケーンが直撃した場合、施設の下水全体はどうなってしまうのか?」と、オセオラさん。現地はミコスキー族だけでなく、州南部の住民800万人に飲料水を提供する水源になっていると指摘した。

抗議の意思表明として建設現場に直接足を運ぶオセオラさんは「ここは先祖伝来の領土であり、祈るために来ている。ここは私たちの故郷。私たちは故郷のために立ち上がっている」と語った。

メールマガジン登録
見過ごしていた世界の動き一目でわかる

世界20億を超える人々にニュースを提供する米CNN。「CNN.co.jpメールマガジン」は、世界各地のCNN記者から届く記事を、日本語で毎日皆様にお届けします*。世界の最新情勢やトレンドを把握しておきたい人に有益なツールです。

*平日のみ、年末年始など一部期間除く。

「米国の移民問題」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]