メキシコの海岸に漂着するスペースXのロケット残骸、絶滅危惧のウミガメに影響の懸念

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孵化したばかりのウミガメ=6月20日、メキシコ・バグダッドビーチ/Courtesy Jesus Elias Ibarra

孵化したばかりのウミガメ=6月20日、メキシコ・バグダッドビーチ/Courtesy Jesus Elias Ibarra

(CNN) メキシコ北東部タマウリパス州のメキシコ湾に面した砂浜に、溶けたプラスチックやアルミニウム、青い接着剤の破片など、ロケットの残骸が漂着した。この海岸には絶滅危惧種のウミガメが生息している。国境を隔てて隣接する米テキサス州には、米宇宙開発企業スペースXの発射場がある。

同州バグダッドのこの海岸では昨年11月以来、非営利組織(NGO)のコニビオ・グローバルが、スペースXの残骸を回収する作業を続けている。

同団体のヘスス・エリアス・イバラ氏は、昨年11月にスペースXの打ち上げを目撃し、ロケットブースター1基がメキシコ湾に落下するのを見たとCNNに語った。この時は清掃のために、ヘリコプター少なくとも3機とボート10隻以上が数時間で到着したという。

しかし今年5月の打ち上げで、新たな残骸が漂着した。今回はメキシコ側のこの地域が何百万もの残骸で汚染されたとイバラ氏は訴える。コニビオ・グローバルは数日後、500メートルの範囲で1トンを超す廃棄物を回収したという。

5月にバグダッドビーチに漂着したラベル。スペースXのロゴが入っている/Courtesy Jesus Elias Ibarra
5月にバグダッドビーチに漂着したラベル。スペースXのロゴが入っている/Courtesy Jesus Elias Ibarra

「40キロにわたって続く海岸線のわずか0.5キロの範囲で、既に1トン(の廃棄物)を回収した」とイバラ氏は言う。「我々は非常に小さな団体なので、全てを回収することはできない」

回収した残骸は、メキシコ政府の環境保護当局に引き渡したという。

スペースXは6月26日のX(旧ツイッター)への投稿で、清掃活動のための資金や支援は提供したと主張。メキシコ政府に対しては残骸回収のための支援を要請したと述べていた。宇宙条約に基づき、スペースXには残骸の返還を受ける権利がある。

5月にバグダッドビーチに漂着したロケットの残骸/Courtesy Jesus Elias Ibarra
5月にバグダッドビーチに漂着したロケットの残骸/Courtesy Jesus Elias Ibarra

同社が行った検査の結果、ロケット打ち上げに伴う漂流物に関して化学的、生物学的、毒物学的リスクはないことが確認されたとスペースXは主張している。

しかしCNNの取材に応じた専門家は、「残骸の多くに害はない。しかし宇宙飛行関連の乗り物は有害化学物質を含む可能性がある」と説明し、宇宙から来た残骸には触れないことが最善だと指摘した。

イバラ氏によると、海岸の清掃作業では固形のスポンジ状プラスチック、コルクのようなゴムの一種、スペースXの表示が入ったアルミニウム、プラスチック製の気泡シート、鋼管、青い接着剤の破片などが見つかった。

ロケットの打ち上げが失敗した6月に漂着した青い接着剤の破片やごみ/Courtesy Jesus Elias Ibarra
ロケットの打ち上げが失敗した6月に漂着した青い接着剤の破片やごみ/Courtesy Jesus Elias Ibarra

こうしたごみは、この地域に生息する絶滅危惧種のケンプヒメウミガメが食べてしまう恐れがあるとイバラ氏は危惧する。

孵化(ふか)した子ガメ、砂から脱出できず

スペースXのロケットは前回6月19日の打ち上げで爆発を起こした。コニビオ・グローバルによれば、翌朝にはメキシコ側で複数の大きな断片が目撃された。

国民からの苦情を受けてメキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は6月25日の定例会見でこの問題に言及。メキシコ政府は現実に汚染を確認しており、「国際法の枠組みの中で」法的措置を含めた行動を起こすため、ロケット打ち上げの影響を調査すると述べた。

獣医師でウミガメ保護活動にもかかわるイバラ氏によると、ロケットが発生させる振動の影響で、カメの巣がある砂が密集し、孵化した子ガメが巣から出られなくなっていると思われる。巣から出られずに死んだ子ガメは少なくとも300匹に上るという。

「前回の爆発で草木が燃え、ブラボ川の河岸が焼けて、小さな集落付近に落下したパイプに当たってたくさんの樹木が倒壊した」とイバラ氏は話す。タマウリパス州の複数の街では、ロケットの振動によって住宅の軽微な損傷が報告されているという。

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