イラン核開発に「深刻な打撃」、CIAが証拠ありと主張 米空爆の検証続く
(CNN) 米中央情報局(CIA)のラトクリフ長官は25日、声明の中でイランの核開発計画が直近の攻撃によって「深刻な打撃」を受けたことを示唆する信頼できる証拠を多数入手していると明らかにした。21日に行われたイラン核施設3カ所への攻撃を巡っては、米情報部門全体で現在も影響の検証が続いている。
詳細を提示することはなかったものの、ラトクリフ氏はCIAが入手した証拠について、「長年信頼している情報筋もしくは手法からの諜報(ちょうほう)を含む」と述べた。その内容によるとイランの主要な複数の核施設は破壊され、再建には数年を要するという。
ラトクリフ氏の念頭にあるのが当局の正式な評価なのか、当該の諜報に対する自身の見解なのかは不明。
声明の前日には米国防総省の国防情報局(DIA)が米軍の攻撃について、イランの核開発プログラムの中枢部分を破壊するには至らず、開発計画を数カ月後退させた程度とする分析をまとめていた。CNNなど複数のメディアが報じた。
この初期段階の評価は、攻撃によりイランの核開発能力を「消し去った」とするトランプ大統領の主張に疑義を呈する内容。ホワイトハウスはこれに反発し、評価の内容は「誤り」だと訴えている。
ギャバード国家情報長官も25日、X(旧ツイッター)への投稿で「新たな諜報」によりイランの核施設が攻撃で破壊されたとする見解が裏付けられたと述べた。
報告内容の解釈について判断を下す場合、複数の情報機関の意見が微妙な点で食い違うのは珍しいことではない。現在CIAやDIA以外にも、国防総省の衛星画像分析部門などがイラン核施設への攻撃の影響を精査していることはほぼ確実とみられる。
DIAによる米軍の最終的な「戦闘被害評価」が完了するまでには数日、もしくは数週間かかる場合もある。国防総省の手続きに詳しい複数の情報筋がCNNに明らかにした。
情報筋の一人によれば、DIAの初期分析が作成されたのは攻撃からわずか24時間後。準備段階の分析のため、判断に対する「信頼度は低い」という。またある米当局者は分析について、外部の情報機関の見方と連携しておらず、文面自体、最終的な評価の作成には数週間かかる可能性があることを認めていると指摘した。
トランプ氏はかねて攻撃を1回限りのものと想定し、それによって今後のイランの核保有を不可能にしたいと考えていた。しかし専門家らは、その目標を果たすには1回の作戦では不十分となる公算が大きいと述べていた。
特に疑問が渦巻いているのは3カ所の一つ、イスファハンの核施設に対する被害の度合いだ。イランはイスファハンの地下深くに高濃度ウランを貯蔵していると考えられている。
また米当局者らは、イラン国内に他にも秘密の核施設が複数カ所存在し、それらは今回の攻撃で標的になることもなく依然として稼働中だとみている。事情に詳しい情報筋2人が明らかにした。
もう一つの重要な疑問は、米軍の爆弾投下までにイランが高濃度ウランの備蓄を当該の施設から移していたのかどうかだ。少なくともフォルドゥにある核施設に関して、トランプ氏は攻撃を検討していることを事前に公言していた。この問題を提起したある有力な米議員は、「イラン人は馬鹿ではない」と発言。備蓄の移動が行われていた可能性を示唆した。
DIAが作成したような初期段階の評価は、時間が経てば大きく変更される場合もある。米ミドルベリー国際大学院の教授で兵器の専門家、ジェフリー・ルイス氏は、1999年にそうした問題が生じたと説明。当時のユーゴスラビア爆撃に対する初期段階の戦闘被害評価は、爆弾の種類などを織り込んだ技術的なモデリングに基づき「極めて高度な成功」を示す内容だった。ところが時間が経過し、地上の調査を含む新たな分析が行われると、それまで首尾良く打撃を与えたと評価していた複数の標的は、実際のところ囮(おとり)だったことが分かった。これを受け、当初の戦闘被害評価は大きく引き下げられたという。
今回のイランへの攻撃で、米当局者らが物理的に現地の調査を実施できるのかどうかは不明。そのため、現在の情報分析は衛星画像や通信の傍受、イスラエルのような提携国と共有する諜報に頼らざるを得ない状況となっている。